幹事クリタのコーカイ日誌2011

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2月23日 ● 電車の中で化粧をする女と注意するオヤジ。

 今朝の通勤途中でのこと。少し遅めなので地下鉄車内はパラパラと人が立っている程度。僕は座って内田樹の文庫本を読んでいました。とある駅から発車した時に大声が。「車内で化粧するのはみっとないからやめませんか!」。声のした左手側を見ると50才前後と思われる男性が立ちあがっていました。彼の視線の先、僕の右手側の車両連結部近くには、立ってコンパクトに向かって化粧をしている20代半ばとおぼしき女性。彼女は男性の声を無視しています。

 2人の距離は約10メートル。車内では結構な距離です。その間に座っている10人以上の乗客は興味深そうに2人を見ています。とりあえず女性が何も言わないので、男性はそのまま座席に座ってしまいました。男性の視線から外れたところで、また女性は化粧を再開。僕の向かいのオバサマ2人はクスクス笑いながら「最近の若い子は本当に…。でもあんな風に注意するのはどうかねぇ」などと喋っています。

 次の駅に着いたところで女性は隣の車両に移っていきました。空いた座席に座ってまだ化粧は続いています。その次の駅に止まる前に男性は立ちあがり、何やら車内をうろついてブツブツ言っています。ちょっと怪しい感じで、周りの人も不審そうな目で見ています。と、僕たちの前を通り過ぎて隣の車両との連結部近くまで行き「化粧をやめろと言ってるのがわからんのか!お前みたいなやつがいるから日本はダメなんだ!」と叫びました。周囲の客がサッと引いたのがわかります。そのまま止まった駅でその男性は降りていきました。車内にはホッとした空気が流れます。

 正直、電車の車内で化粧する女性に対してマナーとしてどうなの、ということは僕も思います。男性だけではなく、むしろ女性の方が厳しい意見を言うのも聞いたことがあります。ただ最近はあまりにも見慣れてしまったということもあり、もはや今さら「不快だ、けしからん」と憤るほどには思いません。「みっともないからやめた方が良いのにな」くらいです。眉をひそめはしますが、それで周りに迷惑をかけているとまでは言えませんし。

 だから大声で注意した男性の言わんとする内容は理解できますが、そういうやり方で注意しても誰も喜ばないだろうと思います。言われた女性は「変なオヤジに絡まれた」と思うだけで反省はしないでしょうし、周りも「よく言った」と思うよりも「なんか怖い人だな」と思う人の方が多いでしょう。言った本人は「言ってやった」というヒーロー気分は味わっていたのかも知れませんが、言うことを聞いてくれないのだからイライラと不満は残ると思います。

 伝えたい内容は正しくても、手法を間違えていたら共感は呼ばないし効果もありません。これは我々の仕事である広告とか広報、PRでも同じ。言いたいことを言えば伝わると思ってただストレートに言っても誰も聞いてくれません。むしろ「押し付けがましい」と反感を買うだけだったりします。聞いてもらうための環境を作り、受け手に届く良く計算された表現で伝えなければ効果はないのです。共感してもらって初めて受け手は内容まで聞く気になるのですから。

 そしてこれは広告に限らず日常生活でも人にメッセージを伝える時には共通した話。親から子でも、上司から部下でも、教師から生徒でも同じことでしょう。通勤電車の中で思わず良い勉強をさせてもらいました。




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