幹事クリタのコーカイ日誌2011

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1月25日 ● 『仰げば尊し』の原曲発見。

 僕たちが小学生、中学生の頃に卒業式で歌うと言えば『蛍の光』と『仰げば尊し』でした。どちらも名曲ですが、特に僕は『仰げば尊し』のメロディの格調高さが好きで、未だに3月にこの曲を聴くと、思わずジーンと胸が静かに震えます。歌と卒業の思い出とその時の感情が密接に結びついているのです。

 主に在校生が歌う『蛍の光』がスコットランド民謡というのは広く知られていますが、卒業生が歌う『仰げば尊し』は長らく「作者不詳」ということになっていました。作詞・作曲者はおろか、どこの国で作られたものかもわからないままだったのです。ところが先日この曲がアメリカ生まれであることが判明しました。19世紀後半に出版されたアメリカの本に全く同一のメロディの曲が収録されていることがわかったのです。よくぞ見つけたものです。

 記事によれば原曲を発見した桜井雅人一橋大名誉教授(英語学・英米民謡)はインターネットを活用して欧米の古い音楽教科書や賛美歌を集めて照合していたそうですが、ネット時代だったからこそできた作業だったのでしょう。書籍・文献を探すのがネット以前に比べて本当に楽になりましたからね。自分が卒業論文を書いた時にネットがあれば、どれほど楽に文献が集められたことかと今さらながら思います。

 ただ残念なのは、この『仰げば尊し』、実はもう今の学校ではあまり歌われていないこと。うちの子どもたちも歌ったことがないと言っています。学校で教えなくなったのは、どうやら歌詞の内容が時代にそぐわないというのが大きな理由らしいのですが、あの歌詞だからこそ良いのになぁと僕などは思ってしまいます。

 特にやり玉に上がっているのは2番の歌詞で「身を立て 名をあげ」の部分が立身出世が前面に出ていて現代の価値観に合わない、またそれに続く「やよ励めよ」が難解である、というようなことで、音楽の教科書に曲が掲載されていても2番の歌詞だけは削除されているのがほとんどらしいのです。

 まあ確かに立身出世というのは特に日教組的価値観からは「時代錯誤」と目の敵にされるのでしょうが、それほど大げさにとらえるのではなく、卒業してもこの先も頑張れよ、という恩師からのエールだと素直に考えれば良いんじゃないかと思います。卒業式で前向きな向上心を否定することはないでしょう。これも競争を否定する「ゆとり教育」の影響なのかどうかは知りませんが。

 今回の原曲の発見のみならず、アンジェラ・アキの『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜卒業』(動画)や、AKB48の『10年桜』(動画)のイントロに『仰げば尊し』は使われたりしているので、これからはまた徐々に若者に浸透していくかも知れません。素直に恩師に感謝し、『仰げば尊し』を感動をもって歌うことができる学校であって欲しいと願っています。




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