幹事クリタのコーカイ日誌2010

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7月16日 ● 事件は現場だけではわからない。

 「踊る大捜査線」の名セリフと言えば「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というのがあります。こうやって書くとあまりにも当たり前です。事件が起きているから「現場」なんですから。実は昨日、その「現場」が会社の前に舞い降りました。もうビックリです。

 午前11時過ぎ、僕はデスクに座ってツイッターを眺めていました。と、そこに出勤してきた(フレックスなので昼頃に出勤する社員も多いのです)連中が何やら大声で話しています。「大騒ぎ」「野次馬」「血まみれ」「蹴飛ばした」「犯人」「警官」etc.という物騒な単語が切れ切れに聞こえてきます。窓際から下を覗きこむ人たち。僕も聞き耳を立てていると、どうやら何か傷害事件が起きて会社の玄関前で捕り物騒ぎになったようです。そして同僚のS氏がその逃げてくる犯人の足を引っかけて転がしたとか。S氏の服には血の痕がついています。

 「もう終わったの?」「いや、見に行くなら今のうち」「まだ下に犯人いるよ」などと言う話し声とともに、ドヤドヤとみんなが下に降りて行きます。一瞬「なんてミーハーな人たちだ、全く嘆かわしい」などと思ったのですが、次の瞬間には僕もエレベーターで下を目指していました。

 玄関前にはすごい人だかり。我が社の社員だけではなく、通りすがりの野次馬も集まっています。会社の前にはお馴染みの立入禁止の黄色いテープが張り巡らされていて、これではまるでうちの社内が事件現場みたいです。まさかあの黄色いテープの内側の人になろうとは。そして目の前の路上にパトカーが数台、警官も20人くらいはいるでしょうか。犯人と思われる人物が警官に取り囲まれていて、いま到着した救急車に乗せられようとしています。まさに事件は現場で起きていました。

 ただ、一体どんな事件が起きたのかは、さっぱりわかりません。あれこれと見たことを語り合うのですが、結局みんなで首を捻るばかり。犯人を乗せた救急車が去っていったので、仕方なくフロアに戻ります。現場に遭遇したと語るS氏によれば、大通りに向かって白人の男性が血まみれで走ってきたと。彼を後ろから追っている人たちがいて「掴まえてくれ」と叫んでいたと。そこでS氏は思い切って足を出して白人の足を引っかけて転がして蹴飛ばしたと。それでそそくさと逃げてきたら、どうやらそのまま犯人は捕まったようだと。

 確かにS氏の状況はわかりましたが、やっぱり一体その犯人は何をやらかしたのかもさっぱりわかりません。つまり事件は起きたようなのですが、その事件がどういう事件だったのかは皆目わからないのです。「ひったくり?」「強盗?」「暴力団絡み?」。ドラマならこういう時に都合良く事情を説明してくれる若手刑事や警官、もしくは新聞記者や野次馬がいるのですが、実際の現場にはそんな人物はいません。みんな断片的な情報をつなぎ合わせようとするのですが、半分以上は憶測が混じっているので、さっぱり真相が見えてこないのです。

 そうこうしているうちに、S氏が警察から事情聴取を受けることになりました。彼も詳しいことは何もわからないままに、その武勇伝を警察に話したらしく、後で警察から感謝状だか何だかが貰えるらしいです。しかし、結局事件の真相はわからないまま、会社の前の物々しい黄色いテープもなくなり、警官もパトカーも野次馬もあっという間に消えてしまいました。残ったのは僕が興奮して書いたツイッターの呟きだけ。まあわからないなりに臨場感はありますから、事件が現場で起きていることは伝わったかとは思いましたけどね。でも事件には現場だけではなく、全体像を把握する会議室もやっぱり必要だなと思いました。



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