幹事クリタのコーカイ日誌2010

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6月28日 ● ステージには魔物が住んでいた。

 サックスを習い始めてもうすぐ1年。この1年の成果を発表する「サマーコンサート」が昨日ありました。コンサートとは言っても、まあスクール生の発表会ですから音楽的には聴けたものではないのですが、場所だけは約500人弱収容できる中電ホールという立派な会場。楽器を習いたてのオジサンオバサンに無用なまでにプレッシャーをかける企画です。

 僕が吹くのは「ムーン・リバー」。ヘンリー・マンシーニの超有名なスタンダードナンバー。もうかれこれ半年もこの曲だけを吹いています。いろいろ途中ではひどい状態の頃もありながらも、この1ヶ月くらい猛練習したお陰でかなり様になってきていました。自分でも「これは結構いけるかも」と思っての発表会です。

 自分の出番は第2部の4番目だったのですが、張り切って第1部が始まる前から会場入り。第1部を頭から客席で聴いていました。まあこんな自分が言うのもなんですが、みんな演奏はひどいものです。ヨチヨチ歩きの赤ん坊のような演奏ばかり。途中でミスするくらいは普通で、完全に止まっちゃう人や、演奏途中に「すいません」と謝る人までいます。娘の幼い頃のピアノの発表会でも小学生ならもっとマシだったなぁと思うレベル。

 こんな演奏をずっと聴いていたら安心と不安が交錯してきました。「このレベルなら大丈夫」という思いと「自分も同じように緊張してミスするんじゃないか」という思いの両方が押し寄せてくるのです。控え室で先生から直前にいろいろとアドバイスを貰います。なんとかリラックスできるように気を遣ってくれているのはわかりますが、なにせ人前で楽器を演奏するなんて中学校の音楽の授業以来。どんどん緊張してくるのがわかります。

 舞台袖で出番待ち。3人前のピアノも2人前のフルートもかなりトチっています。でも1人前のピアノは経験者だけにそこそこまとめてきました。そしていよいよ自分の出番。伴奏してくれるピアノの先生と一緒に舞台に上がり、客席に向かって礼。ピアノと音程を合わせます。ちょっと高いと袖から先生が指示を出すので、少しだけ低く。OKということなのでいよいよ演奏です。

 最初の音がちょっと震えながら出ました。「あちゃ」と思いながら何とか続きを吹きます。ピアノの伴奏の音がよく聞こえません。それでも途中までは不出来ながら何とか間違えずにいきました。しかし、いつもならすんなりいくところで音がオクターブ高く出てしまいました。これは練習の時から緊張するとやっていた悪癖。堅くなって下唇でリードをおさえ過ぎるとオクターブ高くなってしまうのです。

 これで一気に頭が真っ白になりました。そこから2小節ほどグダグダ。いったんマウスピースから口を離して深呼吸して続きを吹きます。ヨレヨレながら何とか音は正しいところへ戻りました。しかし右足がガクガク震えて止まりません。それに焦ってまた伴奏が聞こえなくなりました。締めの最後の音がまたオクターブ上がった調子外れの音になって終了。もう演奏を終わっても頭は真っ白です。

 練習の時でもこんなひどい演奏をしたことはないというくらいの不出来。終わったところで「もう1回やらせてくれ」と言いたいほどでした。自分としてはこれほどボロボロになるとはさすがに予想していなかったので落ち込みもひどいです。それなりに緊張するだろうとは思っていましたが、ここまで緊張するとはさすがに予想していませんでした。自己評価は100点満点で5点くらい?最後まで何とか吹いた分だけ5点です。

 家に戻ってデジカメに録画した演奏を見てみました。見たくないほどひどいと思っていたのですが、見てみたら意外とそこまでひどくはありませんでした。確かに音を外していますし、途中でわけがわからなくなっているようなところもありますが、何とかかんとか最後までヨレヨレながらも乗り切ったという感じ。他のボロボロの人達を見慣れてしまったせいかも知れませんが。

 100点満点中30点くらいにしても良いかなと思い直しました。5点ではサックスを川に投げ捨てようかと思いましたが、30点なら次回もう一度リベンジする気持ちにもなれます。練習以上のものは決してできないこともよくわかったので、しっかり練習してまたステージに立ちたいと思います。それに少なくとも練習通りにやるのは何と言っても「場慣れ」ですからね。ステージには演奏者を食い物にする怖い魔物が住んでいますが、そのステージに再び引っ張り上げようとする魔物も住んでいるようです。



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