幹事クリタのコーカイ日誌2010

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5月7日 ● 今さらながら「勝間vsひろゆき」の面白さについて。

 ツイッター上で話題になっていたBSジャパン5月2日の「デキビジ」。勝間和代の対談番組に2ちゃんねるの生みの親である「ひろゆき」こと西村博之が登場、全く噛み合わない対談を繰り広げたということで、遅ればせながら僕もYouTubeで見ました。いやはや、予想以上の爆笑対談で面白かったです。未見の方はぜひ!と思ったら、もう削除されてしまいました。残念。ということで、それを書きおこしたテキスト版がこちらです。対談内容全部じゃないですけどね。

http://d.hatena.ne.jp/wt5/20100503

 この対談はひろゆきのブログによれば、彼が勝間との対談を以前に断っているので、誘いを2度も断っていけないだろうと臨んだのだそうですが、最初から勝間の思惑と、それに乗る気のないひろゆきの対応がズレまくります。勝間は2ちゃんねるの創始者であるひろゆきが相手ということで、まずはネットの匿名性をテーマに乗せますが、ひろゆきはこの話題は散々し尽くしていますから、勝間の言うことをことごとく論破。もう瞬殺です。苛立つ勝間。挙句に勝間は「ダメだこりゃ」と言い放ち、それをひろゆきに「失礼じゃないですか?」と突っ込まれて目が泳ぎオタオタに。ここは前半の見どころです。

 さらに勝間は「若者の起業促進の必要性」を若くして起業しているひろゆきに語らせようとしますが、ここでもひろゆきに「なんで若者が起業しなくてはいけないの?」と本質的なところを突っ込まれてまた発狂寸前になってしまいます。勝間の論は全て誰もが居酒屋で言っているような表層的で底の浅い、しかもどこかから持ってきたデータを元にしたものなので、根源からの疑問を提出するひろゆきに全く太刀打ちできません。

 要は勝間が考えているわかりやすいストーリーにひろゆきが乗ってきてくれないだけのことなのですが、それに苛立つ勝間はとうとう「これまで対談してきた中で一番やりにくい」「あなたは自分が全て正しいと思っている」「人を見下している」などとひろゆきの人格攻撃を始めてしまいます。ここ爆笑です。それは全てお前のことだろう〜!と見ている人の誰もが突っ込んだことでしょう。

 勝間は「この対談は夫婦喧嘩と同じ」だと言い始め、何とひろゆきを説教。訳のわからない例え話にひろゆきはもう苦笑するしかなくなります。ぐだぐだで噛み合わないままに対談は終了、最後は番組の女子アナとまでひろゆきは噛み合わないトークを繰り広げて女子アナを怒らせて終わります。もう笑えて笑えて、エンターテイメントとしては最高の出し物でした。もちろん制作側は笑いを取ろうとは思っていなかったでしょうけど。

 勝間はひろゆきを呼ぶなら、もう少し彼のことをきちんと調べてから呼ぶべきでした。少しでも彼のことを知っているなら、あんな予定調和なトークに乗ってこないだろうことは予想がつきそうなものです。でも番組としては面白かったので、そういう意味では勝間は儲けたのかも知れません。マイナーな対談番組が、ここまでネット上で話題を呼んで注目を集めたのですからね。彼女の転んでもタダでは起きない運の良さも並大抵のものではありません。

 勝間とひろゆきの爆笑対談から透けて見えたのは、既得権者の大人とそれにどう対抗するかを考えている若者との対立の図式です。大人は若者を非難しながらも、何とか若者から絞りとろうと考えています。だから若者にもっと働け、起業しろ、金持ちを目指せ、その金を遣えと煽るのです。勝間はその代弁者です。カツマーがバカにされるのは、勝間の言う通りにしていたってカツマーは搾取されるだけで金持ちになどなれないからです。

 ところが賢い若者はそれらが全て既得権益を握っている大人の利益のためだと見透かしています。だから彼らは大人の思惑に乗りません。大人に煽られても無理をしません。生活を簡素にシンプルにして、ムダだと思うものを排除していきます。高級ブランド品もいらない、高級車もいらない、ムダに高い料理、ムダに高い娯楽もいらないのです。自分たちが本当に必要で、その価値を認めたものにだけきちんと金を払おうと考えています。

 若者は賢くなっています。大人が思っているよりもはるかに彼らは賢い消費者です。若者の稼いだ金を絞り取ろうと考えている大人の思惑に易々と乗るほどバカではありません。まさに勝間の思惑に乗らないひろゆきとそっくりです。ただ若者は消費者としては賢いのですが、さて生産者として、労働者として賢いのかどうか、そこはわかりません。世の中は消費者だけでは成り立たないのですが、そこが大人から見ると苛立つところですし、勝間がひろゆきに苛立つ根本原因でもあります。ひろゆきの言うような「安全な日本」を維持する努力をしているのは誰か、それを維持していくために必要なことは何か、そこをあんたたちは考えているの、と勝間は説教したいのです。そういうところも含めて、実に面白い対談だったと思いました。

 最後に蛇足をひとつ。ホリエモンがこの対談について映像で30分も見るのは退屈だ、テキストで読めば良いというようなことを書いていますが、本当は映像で見ないとこの面白さは伝わりません。表面的な字面を追うだけじゃダメです。その人の気持ちは声や表情や仕草にも十分に表現されていますからね。つくづくYouTubeから削除されてしまったのが残念です。どこかに動画が残っていたら、ぜひご覧になってみてください。この「コーカイ日誌」を読んでから見ると、さらに面白いですから。



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