幹事クリタのコーカイ日誌2010

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4月27日 ● 井上雄彦「最後のマンガ展」の新聞広告。

 昨日の朝日新聞朝刊のセンター見開きに井上雄彦「バガボンド」の絵がドーンと載っていました。それだけでもインパクトが大きいのに、さらに見てみると何もコピーがありません。中央左にQRコード。左下にURL。タイトルもクライアント名もないこの広告がよく朝日新聞の厳しい審査を通ったな、というのが第一印象でした。

 次に絵を見ながら考えます。これは一体何の広告だ?僕はマンガ好きですから「多分、井上雄彦のマンガ展の告知だろうな」と思い付きました。果たして携帯からQRコードを読み取ってアクセスしてみるとビンゴ。「最後のマンガ展 仙台版」の告知でした。そこには新聞広告についても説明があり、「マンガ展へ通じるひとつの作品」「一枚の絵としてご鑑賞いただければ」だそうです。

 正直、僕が広告制作者で、しかもマンガ好きだからこれだけ丁寧にこの新聞広告を読み解こうとしますが、一般の人は大抵これはスルーでしょう。センターを開いて「マンガが載ってる」と思ってスルー。ちょっと気になった人は「なんの広告?」と思うでしょうが、何も情報がないので諦めてスルー。わざわざバーコードリーダーでQRコードを読み取ろうとするのは相当情報感度の高いマンガ好きな人だけです。

 さて、朝日新聞読者にそんな人がどれほどいることやら。1割もいなさそうだと思いますが。挙げ句にわざわざ読みにいったら「仙台で開かれるマンガ展」というローカルな情報。東京、大阪、熊本で開かれた「最後のマンガ展」に行った人はいかないでしょうし、中部、中国、四国の人もわざわざそんな遠くまで行こうとは滅多に思わないでしょう。となると、考えられるターゲットは仙台を中心にした東北地方のマンガファンだけ。それを朝日新聞全国版で掲載する意味はなに?

 考えれば考えるほどムダだらけの広告です。ここまでムダが多いといっそ清々しさすら感じます。恐らくこの広告はそもそも本来の意味では不必要なものでしょう。マンガ展への動員だけならこんな大金を使う必要はないし、多分あまりPRしなくても十分に人は来ると思います。

 だったらなぜこんな広告を打ったのか?まあ企画書上はいろいろ理由が書いてあると思いますが、つまるところ話題作りでしょうね。特に業界に向けての。マンガ業界、出版業界、広告業界。これらの業界内の人に対して「すごい」と思わせたいのが狙いであって、一般人のことはあまり意識していないと思います。後はせいぜいコアなファン向けでしょう。

 久しぶりにこんなバブルっぽい広告を見ました。



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