幹事クリタのコーカイ日誌2010

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4月14日 ● 演歌を聴かない世代への演歌。

 昨年亡くなった中島梓がかつて「我々は年を取っても演歌を聴かない最初の世代」だと言うようなことを言っていました。うろ覚えなので間違っていたらゴメンナサイなのですが、とにかく僕より8才年上の彼女の発言を聞いて、まだ若かった僕は「なるほど」と膝を打ったものでした。

 で、その中島梓も死に、僕も50才を前にして思うのは、彼女の発言は半分だけ正解だったなということです。確かに僕らは日常的にかつての演歌を聴くという習慣はありません。もちろん中には五木ひろしや石川さゆりや氷川きよしが好きな同世代の人間もいることでしょうが、平均的な50才前後はあまり演歌を聴いていないと思います。聴いていたら、こんなに演歌が売れなくなるわけないですからね。

 しかしだからと言って10代の若者と同じ音楽を楽しんでいるかと言えば、それも違います。僕たちが一番好きなのは若い頃に聴いたロックやフォークやポップスであり、それと似たテイストのする現代のアーティストです。そして、それらの音楽は今の若者からすれば「古い」わけで、ちょうど僕たちが若い頃に村田英雄や島倉千代子を聴いて思っていたのと同じ感覚だと思います。

 坂本冬美が出したカバーアルバム「Love Songs〜また君に恋してる〜」は、そんな中年世代に向けて作られています。選ばれている楽曲は1970〜1990年代を代表するようなフォーク&ポップスのヒットナンバー。それを演歌歌手としてその実力に定評がある坂本が情感たっぷりに歌いあげています。まさに「演歌を聴かない世代」のための演歌です。

 表題曲でありシングルとしても発売された「また君に恋してる」を筆頭に「恋しくて」「あの日に帰りたい」「会いたい」「言葉にできない」「恋」など、次々と名曲を乱れ打ちされて、もうどうしたら良いの、という感じです。僕にとっては特に「なごり雪」「時の過ぎゆくままに」あたりはど真ん中ストライクで、タイトルを並べただけで嬉しくなってしまいます。素晴らしい選曲です。

 ただ、聴いていて思ったのは、いくら歌が上手い坂本冬美と言えども、やはりオリジナルは超えられないなということ。いや、これは正確な表現ではありません。もしかしたら客観的には超えているかも知れないのですが、青春時代に聴いたオリジナルを主観で超えることは無理というものです。思い入れが強すぎますから。

 もともとボーカリストとしても素晴らしい小田和正や松山千春はもちろんですが、坂本冬美よりはるかに歌が下手なユーミンだって、やっぱりオリジナルを聴く方が心に入ってくるのは仕方ありません。これはもう刷り込みの問題です。

 だからこのアルバムは実は中年が聴くよりも、オリジナルをあまり良く知らない若者が聴く方が良いかもと思いました。楽曲の良さと坂本のボーカルは彼らの方が素直に楽しめる気がします。僕の率直な感想は「オリジナルが聴きたくなった」ということですから。あー、と言うことは、やっぱり演歌を聴かない世代なのかなぁ。



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