幹事クリタのコーカイ日誌2010

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2月19日 ● 藤田まことと水谷豊に感じる「スタイル」。

 藤田まことが亡くなりました。子ども時代に「てなもんや三度笠」で見ていたあんかけの時次郎。白木みのる、財津一郎との掛け合いは、子どもながらに大笑いしていたし、当時の子どもとして当然「あたり前田のクラッカー」のフレーズも口にしていました。当時の藤田は藤山寛美や大村崑と並ぶ関西喜劇のスターでした。

 その後、中年になった藤田まことは必殺シリーズの中村主水として再びブレイク。一転してシリアスな殺し屋です。必殺シリーズの熱心な視聴者ではありませんでしたが、それでもたまにちょこちょこ見ていると、主水が出ている時と出ていない時では何かが違います。重み、でしょうか。やはり藤田の主水あっての必殺シリーズだなと思っていました。

 さらに初老になった藤田は「はぐれ刑事純情派」でまたまた当たり役を掴みます。今度は人情派のベテラン刑事。実に当たり役がバラエティに富んでいて多彩です。その後には「剣客商売」も当たって老境に入っても売れっ子俳優として現役感を保ち続けていました。僕が最後に見た藤田のドラマは2008年の「佐々木夫妻の仁義なき戦い」で、稲垣吾郎と小雪の主役2人の間をうまく取り持つ名バイプレーヤーぶりを見せてくれました。「仁-JIN-」でも本当は新門辰五郎役で出る予定だったそうですが病気降板。もし出ていたら緒形拳の「風のガーデン」のような遺作になっていたことでしょう。

 こうして振り返ると藤田にはたくさんの当たり役があって、「これ」を挙げようとすると世代によって分かれそうです。恐らくもっとも長く続いた中村主水が代表作としては一番に上がることでしょうが、出世作となったあんかけの時次郎こそ藤田だと思っている人もいることでしょう。まあそれだけ仕事に恵まれた役者人生だったんだなと思います。

 こういう多彩なイメージの代表作を持つ俳優はそれほど多くはありません。大抵はひとつのスタイルがあって、その路線の中でいくつかの代表作があるものです。高倉健しかり、吉永小百合しかりです。藤田以上に多彩な代表作を持つ俳優として1人挙げれば水谷豊でしょう。少年時代の「バンパイア」、青年時代の「傷だらけの天使」、「熱中時代」、そして今の「相棒」。イメージを変えながら繰り返し訪れる水谷豊ブームには驚きます。

 藤田まことと水谷豊。役者としてのイメージでは全く似通っていませんが、何となく共通した「スタイル」というか、 仕事に対する姿勢に似たものを感じるのは僕だけでしょうか。華やかな「スター」とは違う役者としての職人気質。それでいてバイプレーヤーにとどまらない存在感の強さ。できたら藤田にはもう少し長生きしてもらって、老境での演技も見せて欲しかったと思います。


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