幹事クリタのコーカイ日誌2010

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1月13日 ● 広告費も事業仕分けされる時代。

 昨年の「事業仕分けショー」は大変世間の注目を集め、民主党の政治パフォーマンスとしては成功の部類に入ると思います。ネット上では14人になったEXILEの事業仕分けネタなども流布し、なかなか笑えました。しかし、笑っている人ばかりではなく、実際に仕分けされてしまった分野の人にとっては冗談では済まないことでしょうし、ああいうことが「あり」だと思われると、今後いろいろな分野に波及する恐れがあります。

 広告業界も不況でカットされる「3K」(広告費、交際費、交通費)のひとつとして、たださえ売上げがガタ落ちになっているのに、さらに事業仕分け対象にされたらたまったもんじゃありませんが、そういう時代はもう目の前にきていると考えられます。

 これまでの広告業界はかなり「勘」で大きな予算を動かしていました。「勘」で悪ければ「長年の経験」と言い換えても良いですが、要は誰でも納得できるような客観的なデータや数値を持たずに、お互いの信頼関係の中で感覚的に判断をしてきたのです。

 しかし、アメリカ発の最新のマーケティング理論ではそんな曖昧な戦略は恐らく戦略の名にも価しません。計測可能なデータ化された広告戦略を元に、常に現状を分析しながらそのプランを逐次変更していくオペレーションが求められるようになります。うーん、カッコ良いです。自分が企業の広告担当者ならぜひそういうことを社長の前で言って胸を張りたいものです。「従来のように広告代理店の言いなりに広告宣伝費を投下するのは目をつぶって会社の金をドブに投げ捨てるようなものです」なんて。

 しかし、広告の現場にいる自分としては、そんなことを言っても、本当にそれで広告宣伝が成功するのかどうか疑わしいと思います。金を捨てる相手をドブ板営業の広告屋から、コンピュータをこれ見よがしに駆使した見せかけだけのIT屋に変えただけのような気がしてなりません。もしそんなことで世間で話題になり商品が売れる広告戦略ができるなら、もっと直接的に音楽CDや映画をヒットさせる方がずっと簡単に儲かります。それができないから広告費に目を付けてきただけのことでしょう。

 素晴らしい映画はマーケッターではなく、芸術家と職人の手によってしか生まれません。同様に時代をつかむような優れた広告を作るのもやはり優秀な広告制作者の「感覚」が一番確かです。しかも確かな上にムダがありません。コンピュータで行う様々なシミュレーションを、優秀な制作者は一瞬のうちに自分の中で終わらせていて、その結果が彼の感覚でOKが出た企画なのです。

 事業仕分けに刺激されて、広告主が広告宣伝費を仕分けしようとして、広告代理店に対し「感覚ではなくはっきりした客観的な数値で示してください。じゃなければカットします」とか言うのは勝手ですが、その結果が必ずしも広告主にとって良いことになるとは思えないのです。そんなことを言って結果つまらない広告を出稿したり、バッサリ広告費を削ったりして本当に大丈夫なのですか?後で商品が売れなくなって泣くのは広告代理店ではなく広告主なんですけどね。ま、広告代理店ももちろん大泣きには違いないので、その前に何らかのやり方を考えていくしかないんですけど。


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