幹事クリタのコーカイ日誌2009

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11月29日 ● 2つの「陸上部物語」。

 映画、ドラマ、小説、マンガを問わず、僕は「青春もの」が好きです。とりわけその中でも「部活もの」が大好物です。青年マンガ誌よりも少年マンガ誌に愛着を感じるのも、部活を舞台にした作品がテンコ盛りだから。野球、サッカー、バスケ、テニス、柔道などのスポーツ部だけではなく、吹奏楽だろうが書道だろうが将棋だろうが、とにかく中学生、高校生、大学生が部活で頑張る物語にはいつもすぐに食い付いてしまいます。

 最近立て続けに読んだ小説は、2つとも陸上部の物語でした。ひとつは佐藤多佳子「一瞬の風になれ」、もうひとつが三浦しをん「風が強く吹いている」。前者は吉川英治文学新人賞と2007年の本屋大賞を取った作品、後者は先日映画化されたばかりの話題作。どちらも作者が女性であり、彼女たちが取材を重ねて男子陸上部の話を書いているところが特徴です。

 「一瞬の風になれ」は高校の陸上部の短距離選手が主人公。潜在能力が高くサッカーから転向した主人公と、その幼なじみで早くから将来を嘱望されている天才スプリンターの2人を中心に、高校1年から3年までの彼らの成長ぶりを描いています。これを読んでいると、それだけで自分も陸上部に所属して高校生活を送っているような気になります。良い仲間と指導者とライバルに恵まれて、すくすくと伸びていく高校生の姿は爽やかで楽しげで、本当に青春って良いなぁと素直に思います。

 「風が強く吹いている」は同じ陸上部でも大学の長距離選手が主人公。こちらはわずか10人で箱根駅伝を目指す弱小陸上部の物語です。素人が1年足らずで箱根駅伝に出場しシード権獲得をするという、現実にはまず不可能な話ですが、それをいかにリアリティを持たせて読ませるかが作家の腕の見せ所。まるで自分が箱根駅伝に参加して走っているかのような臨場感があります。個性的な10人のランナーをきちんと描き分けていて、群像劇としても出色。映画化される前に、マンガ化、ラジオ化、舞台化されたのも頷けます。

 僕が「部活もの」を好きなのは、こうして部活を疑似体験できるからなのですが、それは自分自身の部活体験が中途半端だったという思いがあるからです。中学時代はバスケ部、高校時代は柔道部に所属していて、どちらでもレギュラーで試合にも出ていました。しかしどちらも練習はいい加減で、きちんとした指導者もおらず、もちろん弱小で1回戦負けの常連。今となっては遅いのですが、もう少し真面目に練習すれば良かったなぁと悔いが残っています。だからこそ、本気で部活に取り組んでいる物語の世界に入り込んで、一緒に部活をやり直したいのです。

 この2作品を読んで「部活は良いなぁ」と改めて思ったので、今は津原泰水「ブラバン」を買ってきて読み始めました。僕とほぼ同世代の話だけに、これはこれでまた良いのです。青春を懐かしむのは年を取った証拠かも知れませんが、自分が忘れかけているものを思い出すには良い刺激になります。


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