幹事クリタのコーカイ日誌2009

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10月27日 ● ヒトラーとか言ってる時点でダメでしょ。

 注目の鳩山首相の所信表明演説。これまでの自民党の首相の行ってきた各省庁からの施策説明をまとめたようなつまらない所信表明演説に比べれば、鳩山首相がこれからの日本について何を考えどうしていきたいのか、大きなコンセプトを語っていて、それはそれで評価すべきだと思いました。夢や理想を語ることに反感を覚える人もいるでしょうが、政権交代をした首相の最初の演説なのですから、まずは大上段から「理想ありき」で語り始めるのは悪くないというか、むしろそうすべきだと僕は思います。

 しかも「あの暑い夏の総選挙」から始まり、遊説中に出会ったおばあちゃんやチョーク工場のオヤジさんの話などを盛り込むあたりも、これまでの堅苦しい演説と違い、国民に身近に感じてもらえるような「伝わる」努力をしています。情緒的過ぎるという批判もあることでしょうが、メッセージはただ内容が正しければ良いというものではなく、きちんと伝わるように発信することが大事だと思うので、そのあたりの工夫は評価して良いでしょう。

 ただこの演説に対する批判にも頷ける部分は多々あります。「具体的な提言がない」というのは、首相自身も認めています。僕もそう思います。先ほどの夢や理想を語ることと相反するようですが、そうではなく、単に夢や理想を語って終わってしまっていて、具体性の欠片も見えてこないからダメなのです。政治は現実です。夢や理想は良いけれど、じゃあ切迫した目の前の問題をどう対処していくのか、そこに具体性がなければ「夢物語」と斬って捨てられても仕方ありません。

 鳩山首相の演説には「バラマキ」への言及はあっても、膨れ上がる必要な財源についてどうするか、膨大な赤字国債をどうするつもりなのかは知らん顔です。「緊密で対等な日米同盟」も言葉としては心地良いのですが、具体的に何をアメリカに対して提言し、どう実現していくのかは全く見えません。今のアメリカが日本と対等な同盟を考えているとは到底思えません。

 東アジアとの連携についても同様。ひと括りに「東アジア共同体」と言っても、中国、台湾、韓国、北朝鮮、それぞれが全く違う相手なわけですから、そんな簡単に「仲良くしましょう」と言って善意で仲良くしてくれるはずもありません。下手に甘い顔だけしてみせたらつけ込まれるのが落ちです。性善説が通用するような相手ではないことは誰だってわかっています。鳩山首相だってわかっていることでしょう。じゃあ具体的にどうするの、というところが欠落しているから批判されるのです。

 いくら美しい言葉で飾られていても、実際の政治は痛みを分け合うことでしか実現していきません。具体的な提案というのは、その「痛み」を明らかにしていくことです。八方丸く収まる魔法の政策はあり得ません。「無血の平成維新」という言葉は勇ましいですが、本物の血こそ流れなくても、維新を実現するためには痛みは伴わなければ嘘です。それを明らかにしていくことが、理想を語る首相の役割だと思います。誰が痛い思いをするのか、どれくらい痛いのか、それを明示しないで夢の話ばかりしていても、現実はそううまくはいきません。

 ところで自民党谷垣総裁。この所信表明演説に対する感想が「ヒトラー・ユーゲント(ナチス党の青少年組織)がヒトラーの演説に賛成しているような印象を受けた」ではダメでしょう。そんな感想しか持ち得ないのかと唖然としてしまいました。麻生首相がかつて民主党の勢いをナチス台頭になぞらえ陳謝したのに未だに懲りていないのかと。そもそも近年一番ヒトラー的だった日本の政治家は自民党の小泉首相ではないか、という皮肉は置いておいても、「ヒトラーみたい」という悪口は子どもの喧嘩みたいでレベルが低過ぎます。まあヒトラーの政策が社民主義的だったということを念頭に置いての発言なら頷けなくもないですが、流れから言ってそういう論旨ではないですしね。

 昨日も書きましたが、民主党は突っ込み所も多々ありますが、それでも良いところもあります。それに比べて今の自民党はダメなところしか見当たりません。まるで深い谷底に落ちてしまったようで、這い上がってくる気配すら感じません。そこまで腐っていたのかと思うと、政権交代したのも仕方ないかと思いますが、でも自民党がきちんと立ち直らないと、今回の政権交代の本当の意味がないんですけどねぇ。