幹事クリタのコーカイ日誌2009

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10月17日 ● 「ロンバケ」と言えば?

 世の中の20代〜30代の女性に「ロンバケと言えば?」と聞けば当然キムタクと山口智子のドラマ「ロングバケーション」を思い浮かべることでしょう。フジテレビのドラマの、そしてキムタクのドラマのひとつの絶頂だったあの大ヒットドラマを「ロンバケ」と縮めて呼ぶのも日本の常識、なのかも知れません。

 ただ40代後半から50代にとっての「ロンバケ」ってもしかしたら大瀧詠一のアルバム「A LONG VACATION」のことではないでしょうか?まああのアルバムを誰もが「ロンバケ」と縮めて呼んでいたかどうかは定かではありませんが、少なくとも僕の周りではそう呼称していた記憶があります。

 「A LONG VACATION」が発売されたのは1981年。僕は大学3年生の夏にカーステレオでカセットテープがすり切れるほど繰り返しかけてドライブしていたのを思い出します。ラコステのポロシャツを着て助手席にニュートラファッションの女の子を乗せ、後部座席にテニスラケットを置いて海や山へとドライブ、という典型的な当時の大学生でした。もっともそれはお坊っちゃん系私大の学生のスタイルで、僕のような鈍くさい国立大生でそういうことやっているのは一部の不真面目な跳ねっ返りだけでしたけどね。いやぁ、いま思い出しても恥ずかしいですが懐かしいです。

 その後、このアルバムは夏が来るたびにヒットチャートに顔を出すロングセラーになりました。まさに80年代を象徴する名盤と言って良いでしょう。実はその名盤を先日ふと思い出してCDで買いました。なにせ僕が持っていたのは当時のカセットテープだけだったので、すっかりテープが伸びきってしまって最近聴きたくてもまともに聴けない状態だったのです。

 僕は太田裕美ファンだったので、彼女が歌っていた「さらばシベリア鉄道」がこのアルバムの中で一番思い入れがあって好きなのですが、改めて30年近く経ったいま聴き直してみると、当時から指摘されていたようにやはりこの曲だけ浮いていることは確かですね。夏のリゾートライフをイメージさせる楽曲群の最後になぜか冬のシベリア。極彩色からモノクローム。太田裕美ファンの僕だから「ノープロブレム」ですが、そうじゃなければブーイングを浴びせたくなるのも理解できます。

 まあそれもそれで「ロンバケ」。名人芸なアレンジも素晴らしいですが、コピーライター的に惹かれるのはやはり歌詞。松本隆の紡ぎだした言葉はどの曲でも本当にキラキラと輝いていて、中年になった僕には眩しいくらいです。「君は天然色」「スピーチ・バルーン」「恋するカレン」なんかを聴きながら大学生の頃にタイムトリップしているのは、少々後ろ向きの楽しみかも知れませんが、まあたまには良いでしょ。