幹事クリタのコーカイ日誌2009

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7月9日 ● パワハラ。

 知人のAさんが上司からのパワハラで傷ついていました。話を聞いてみると確かにその上司から言葉の暴力を受けていることはわかりますし、それも原因の半分以上は恐らく上司の機嫌が悪かったから。いわゆる八つ当たりです。Aさんはかなり傷ついてその日の夜は眠れないくらいにショックを受けたようです。

 僕のような古狸ならともかく、Aさんはまだ若いので50代の上司に面と向かって抗議もできないようです。恐らくその上司はAさんがそこまで傷ついていることなど全然気づいていないと思います。そしてAさんの心にずっと残るほどの傷を負わせたことなど理解もせずに、すぐに自分の言ったことなど忘れてしまうのでしょう。なにせ彼はAさんの些細なミスを見つけて、それを利用して自分の憂さを晴らしただけですから。

 こういう場合にAさんがどう対処したら良いのかは難しい問題です。正面切って戦うのか、うまく搦め手から相手を攻めるのか、他に逃げ道を見つけてやり過ごすのか、ふさぎ込んで泣き寝入りか。Aさんは好戦的なタイプではないし、かと言って上手にやり過ごして気分転換を器用に図れるタイプでもありません。Aさんの会社は小さな会社なので、大企業のようにパワハラを相談できる部署もありません。結局まともに受け止めてしまい余計に自分の精神衛生を悪くしかねないのです。

 Aさんのふさぎ込む気持ちがよくわかるのは、僕も似たようなことが若い頃にあり、しかも僕とAさんでは似通ったメンタリティを持っているからです。つまり、真面目で完璧主義、言葉に敏感に反応するし、人の気持ちをついつい読み取ろうとするタイプ。それだけ人のちょっとした悪意にも反応するし、傷つきやすくもなります。悪意のある言葉を投げつけられると、繰り返しそれを思い出してしまって、ますます暗く沈んでしまいます。

 本当はそんなことをいつまでも覚えていても何の得にもなりません。イヤなことなどキレイさっぱり忘れて鈍感に大らかに生きていければそれが一番傷つかないだろうと思います。でも、それができれば苦労はないわけで、溜息をつきながらベッドで眠れない時間を過ごすことになるのです。僕の時でも、寝ていても風呂に入っていても、その人のことを思い出しては腸が煮えくり返るような感じでした。いまこの年になってようやく冷静に振り返ることができますが、10年以上経った30代の時でも思い出すのもイヤでした。

 「そんなことで傷つくなんて思わなかった」「もっと強い人かと思った」なんてことを時々言われます。しかし、傷ついていても傷ついた顔をしないでやり過ごしている時だってたくさんあります。むしろ大人になれば、傷ついていることを言って愚痴をこぼしたりできる相手なんて限られてきます。まして傷つけた相手に向かって直接「傷ついた」と言えるなら、それは十分に信頼関係ができていると考えても良いくらいです。

 パワハラ(僕の頃にはそんな言葉すらありませんでしたが)を受けた僕もAさんも、その上司にはもちろん、周りの人間にもつい平気な顔をしてしまいます。Aさんも他人の前では平気な顔で強がるタイプだから、その心の痛みがよくわかります。一見器用そうに見えて、実は不器用な生き方をする人間は結構損をしていると思います。パワハラ被害はセクハラ以上に本人が辛さや痛さを見せない部分も多いだけに根が深い気がします。