幹事クリタのコーカイ日誌2009

[ 前日翌日最新今月 ]


 
3月13日 ● 誰に、何のために、日記を書くのか。

 僕が仕事にしている広告のコピーというのは「誰に」向けて書くのかをはっきりさせないといけません。ターゲットを明確にして、そのターゲットに届くようにコピーを書きます。コピーライターの駆け出しは、しばしばこれを忘れてしまい、自分が満足するコピーを書きがちです。ターゲットを酔わせずに自分が酔っても一銭にもなりません。

 この「コーカイ日誌」のようなweb日記やブログというのは、そのターゲットの設定が大抵の場合曖昧です。それでお金を貰うわけではないのですから、曖昧でも全然構わないのですが、一応世間に公開して他人に読んでもらいたいと思って書いているのなら、その読んで貰いたい人を想定して書かないと折角の文章が無駄になってしまいますから、ちょっともったいないなとは思います。

 ただ、じゃあむやみとターゲットを考えればいいのかというと、それも違います。広告コピーもそうですが、ターゲットを考える前に、まず目的を考えないと始まらないからです。つまり「何のために」書くのか、それがあって初めて「誰に」書くのかが明確になるからです。

 僕の場合は当初の目的は立ち上げたテニスサークルのサイトへの客寄せでした。毎日更新するコンテンツを作りたくて、それで日記を書き始めたわけです。だからターゲットはテニス愛好家、特にサークルのメンバーとその周辺の人々でした。かなり閉じた相手に向けて発信していたのです。

 ところがいつの間にか日記を目的にサイトを訪れる人が多くなってきて、知らない人からも「読みました」というメールを貰うようになると、自分でも日記を書くこと自体が目的に変わってきてしまいました。日記を読む読者のために日記を書くようになったのです。ちょうど「日記猿人」に登録して読者が増えてきた頃、書き始めて2年近く経ったあたりです。

 そうすると反応の良いネタと、反応の薄いネタが徐々にわかるようになってきました。テニスのネタは反応が薄く、芸能ネタはとても反応が良いのです。政治ネタ、時事ネタはまあまあ、スポーツネタは野球は反応が上々ですが、マイナー競技になると途端に反応が薄くなります。名古屋ネタは当初は良かったのですが、読者が増えるに連れてマイナーになりました。僕の家族や友人のネタも意外と反応があり、特にある特定の変人のネタはレギュラー化するほど人気を博しました。また時々しか書きませんが、恋愛とか男女の話を書くと、ドカンとアクセスが増えることもわかりました。

 そうした反応をいろいろ試した時期を過ぎて、僕自身の中でまた日記を書くことの意味が少しずつ変わってきました。見知らぬ読者をあまり意識することをやめたのです。もちろん読んでもらうための気配りはしています。初めて読んだ人でも話がわかるようにするとか、子どもが読んでも大丈夫なようにエログロな描写は避けるとか、そういう気配りはしていますが、あまりアクセスを無理に稼ぐためのネタをこしらえたりはしません。

 読んでいることがわかっている「顔が見えている」読者を想定し、アクセスが毎日400〜500くらいですから、せいぜい多くてもその500人、コアなところでは本当に顔を知っている数十人のために手紙を書いているようなつもりで毎日書くようにしたのです。

 それが書き始めて数年が経った頃でした。こういう気持ちで書くようになってから随分と書くのが楽になりました。そしてターゲットは年を経るごとにどんどん狭まっていき、今では一番のターゲットは何と言っても自分自身です。自分が後々「あー、そんなこともあったな」と面白く読み返すことができるように書いています。

 だから最近の「コーカイ日誌」の目的は、僕の老後の楽しみのためです。70才を過ぎたジジイになった時に、30代、40代の自分の毎日を思い出して楽しむために書いています。いや、実際最近ちょっと過去の日記を読み返してみたんですが、自分が書いたものなのに意外と面白くて読み耽ってしまいましたから、かなり老後の楽しみとしては、いい線いってるんじゃないかと自惚れているんですけどね。