幹事クリタのコーカイ日誌2009

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1月30日 ● 文庫本がより厚くより高く。

 本は高いものです。我が家では「本代をケチるな」という家訓、というほどのものではなく、合言葉があるのですが、それにしたって専門書や美術書、写真集などはおいそれと買えません。娘が好きな絵本も結構高価なものが多いので、ホイホイと買ってやることなどできません。

 しかし文庫本は誰でも手軽に本を読めるように廉価で販売する目的で作られたものだと思うのですが、最近では随分と高い文庫本が出ています。先日も書店で3冊文庫本を買いました。レジに持っていったら「2719円です」と言われてビックリ。文庫本3冊で?平均900円以上?

 改めて見直してみました。東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』(講談社文庫)780円、大倉崇裕『福家警部補の挨拶』(創元推理文庫)819円、佐藤雅美『青雲遥かに 大内俊助の生涯』(講談社文庫)1120円。SF(?)恋愛小説、推理小説、歴史小説と、どれも大衆向けの娯楽小説ばかりで、それほど高価に設定する必要のないものばかりだと思いますが、この価格。

 ちなみにページ数は各449p、347p、781pとなっていて、ページ単価は1.74円、2.36円、1.43円です。講談社文庫に比べて創元推理文庫が高いのは出版社の規模の違い?ということで、比較的最近買った手元にあった他の文庫本でもページ単価を調べてみたところ、浅田次郎『お腹召しませ』(中公文庫)298p@2.08円、五十嵐貴久『2005年のロケットボーズ』(双葉文庫)462p@1.62円、井沢元彦『逆説の日本史12近世暁光編』(小学館文庫)368p@1.68円、あさのあつこ『ラスト・イニング』(角川文庫)252p@1.98円、綿矢りさ『インストール』(河出文庫)182p@2.19円、石田衣良『少年計数機』(文春文庫)352p@1.62円、東野圭吾『宿命』(講談社文庫)378p@1.72円、東野圭吾『魔球』(講談社文庫)326p@1.78円、海老沢泰久『ふたりのプロフェッショナル』(ランダムハウス講談社文庫)285p@2.39円。

 どうやら単純に分厚い本の方がページ単価が安くなっているというわけでもなく(ある程度の相関関係は見られますが)、やはり大手出版社(小学館、講談社、文芸春秋社など)の方が総じてページ単価は安くなっているようですし、東野圭吾の3冊は全てページ単価が1.7円台ということから作家によってページ単価が決まっているようです。いずれにしても現代の文庫本のページ単価は2円前後となっているようで、恐らく長年にわたり地道に値上げを出版社は続けてきたのでしょう。昔の岩波文庫のように200円前後で買える本などもうないのです。

 と、ここまで書いてきて、以前にも同じようなことを書いた記憶があったので調べてみたところ、2002年9月15日に「文庫本の価格。」というタイトルで全く同じことを書いていました。我ながら進歩ありませんね。

 ちなみに6年半前のこの時に高いと思った宮部みゆき『理由』(朝日文庫)は@1.43円、和田誠ら『今日も映画日和』(文春文庫)は@1.55円。今よりも少しページ単価が安いようです。サンプル数が少ないので断言はできませんが、もし当時の平均ページ単価が1.5円程度だったとすると、今の平均単価(先ほどの12冊で平均1.9円)は結構な値上がり率ではないでしょうか。

 さて、ではページ単価が大体2円前後というのは果たして高いのか安いのかということです。人によって本を読むスピードというのは大きく違うと思いますが、1冊300ページ程度の文庫本を大体3時間くらいで読むとすると、1時間で200円。これは単なる暇つぶしだと考えればそこそこの価格ですが、もし人生に有用な知識やヒントを得られたり、素晴らしい感動に出会えたりするとしたら、とてもお得。この1冊で私の人生は救われた、なんてことになったらまさに「プライスレス」です。

 結局ありきたりな話になりますが、本の価値はその内容如何であり、当たり外れもある中で素晴らしい本に出会うためには、ある程度たくさん読まなければならないということ。まあそれにしても1冊1000円を超える文庫本というのはどうかと思いますけどね。大体、ページ数も昔に比べて多くなって分厚い文庫本が増えていますし。と言うか、800ページ近くあると重くて読みにくくてハンディさが売りの文庫本のメリットが薄いです。せめて上下巻とかにしてくれたら持ち運びも楽なのに。