幹事クリタのコーカイ日誌2008

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12月19日 ● 『風のガーデン』最終回。

 倉本聰の富良野三部作最終章と言われて始まった『風のガーデン』が昨晩最終回を迎えました。何回も書いたように、前半は展開が遅くしかも陰鬱でなかなかスッキリしないドラマでしたが、後半に入ると俄然加速度を増して面白くなりました。終盤の3、4回は実に見応えのあるドラマでした。

 今から思えば前半のもたつきは奥田瑛二演じる二神達也がいけなかったと思います。彼はこのドラマでいわば「死神」の役割を持たされていたのですが、彼のエピソードに時間を割きすぎたために、本来のドラマの展開が遅々として進みませんでした。もちろん大事な役ではありましたが、もう少し話を刈り込んでおいた方が良かったのではないでしょうか。

 同じことは平原綾香が演じた氷室茜にも言えます。主題歌をドラマの中に取り込みたい意図はわかりますが、平原の演技が稚拙なため、他の芸達者な俳優陣の中で浮いてしまっていました。氷室茜が全く魅力的な女性に見えず、彼女と主人公がなぜ付き合っているのか不思議な感じで、全くリアルさがありませんでした。二神が死に、氷室の登場回数が減ったところから一気に面白くなったのですから、足を引っ張ったのはこの2人だと思います。

 ただそれだけではなく、やはり富良野を舞台にすると倉本聰のドラマは輝きが違います。あの自然にマッチするのです。風のガーデンで繰り広げられる中井貴一と黒木メイサと神木隆之介のやり取りは実に魅力的でしたし、演技が決して上手いとは言えないガッツ石松と新人の平野勇樹ですら、富良野マジックで良く見えてきます。四季折々の富良野の美しい風景を余すところなく映し出してくれたこのドラマの映像スタッフの確かな仕事振りには感動しました。

 そしてこれが遺作となった緒形拳。ドラマの中で主人公の生前葬が同級生たちによって行われるわけですが、このドラマ全体がいわば緒形拳の生前葬のようなものでした。ついつい緒形の表情に死相が見えるようで辛いドラマではありましたが、やはり緒形の演技の素晴らしさは称えられるべきものでしょう。

 最後に、このドラマで一番良かったのは演出家が一人で作り上げていたために軸が全くぶれなかったことです。普通連続ドラマの場合は演出家は複数いて回を分けて撮影編集をしていますが、このドラマでは倉本聰×宮本理江子のタッグがガッチリとスクラムを組んでいたために、安心して見ることができました。ドラマというよりも映画的な感じがしたのはそのせいもあったと思います。ラストシーン。エゾエンゴサクの花がキャンピングカーのカタチを残して咲き誇るところを上から撮った絵は見事でした。