幹事クリタのコーカイ日誌2008

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11月15日 ● 北斎の富士を堪能する。

 北斎と広重が昔から好きです。多分、小学生の頃に見た切手の影響です。僕と同世代(40代後半)の男の子はかなりの割合で切手収集をしていたと思いますが、みんなそれぞれに好きな切手がありました。僕の場合は「国宝シリーズ」「国際文通週間」の浮世絵切手が好きでした。いずれも1960年代に発行された切手です。

 このシリーズで切手になった北斎と広重の絵の中でも、とりわけ北斎の「神奈川沖浪裏」と広重の「蒲原」は子ども心に「すごい絵だな」と感動しました。それがヨーロッパの画家たちにも影響を及ぼしたような名画なんてことは全然知らなかったのですが、それでもほんの小さな切手の中に描かれた浮世絵の素晴らしさは感じることができました。

 その後、北斎は「富嶽三十六景」、広重は「東海道五十三次」というそれぞれ代表的な作品集があり、僕が感動した「神奈川沖浪裏」も「蒲原」もその中のひとつだと知って、ますますこの2人をリスペクトするようになったのです。

 で、話は一気に30数年飛んで一昨日。名古屋の松坂屋美術館で「北斎 冨士を描く」という展覧会を見に行ってきました。この週末で終わるということだったので、慌てて駆けつけたのです。この展覧会では北斎の描いた「富嶽三十六景」の全46図と色を変えて摺った4図の計50点と「富嶽百景」の全102点、それに富嶽百景の原本3冊を展示していました。北斎の描いた冨士約150点を全て見ることができたのです。今まで本などでしか見ることができなかった名画を目の当たりにすることができました。

 切手はもちろん、本で見てもよくわからなかった版画ならではの細かな描写が実によくわかり、改めて感動したことは言うまでもありません。「富嶽三十六景」は錦絵とはいうものの、きんきらきんの錦のごとき彩色よりも、淡い色調を重ねた薄墨を生かした摺りの方がより北斎の世界が表現できていることも納得できました。大胆な構図と細やかで生き生きとした描写。ゴッホが衝撃を受けたというのもわかるような気がします。

 子どもの頃、切手で受けた感動を、この年になってまた再び味わうことができました。貴重な経験ができて楽しい鑑賞でした。