幹事クリタのコーカイ日誌2008

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10月30日 ● “スター”高橋尚子の引退。

 高橋尚子が引退を表明しました。久しぶりにすっきりとした笑顔で会見に臨んだ彼女を見て、本当に思い切れたんだなと感じました。アテネ五輪出場を逃し、小出監督の下を離れてからの彼女は、どこか気持ちばかりが空回りして悲愴感が漂っていました。あのシドニーで見せた天真爛漫な笑顔に陰りが見えて寂しかったのですが、ようやくそこから解放されたのでしょう。

 日本女子マラソン界に高橋が残した足跡は偉大なものです。金メダルや世界記録だけではなく、彼女によって日本の陸上選手はプロのアスリートとして認識されるようになりました。それはかつて長嶋茂雄によって日本のプロ野球がファンを魅了する「プロ」の野球であることを認識させたのと同様です。プロ宣言をしたのは有森裕子が先ですが、高橋には長嶋と同じような華がありました。太陽のように輝きファンを魅了する天性のスターの資質。それは有森裕子にも野口みずきにもない高橋尚子だけが持つ陽性の魅力です。

 こうした得難いキャラクターはなかなか現れるものではありません。プロ野球だって長嶋以降、真に長嶋の跡を継いだ選手は出現していません。実力だけなら王も落合もイチローもいますし、キャラクターだけなら新庄だっていますが、両方を兼ね備えた選手というのはそうそう出てくるものではないのです。

 だからこそ高橋には本当はまだまだ現役で頑張って欲しかったと思います。女子マラソンの世界は30代が主役です。北京の女子マラソン金メダルのトメスクも銀メダルのヌデレバも30代後半。高橋と同世代のランナーでした。高橋がきちんとした指導者について練習をしていたら決して彼女だってまだまだ活躍できたと思うと残念でなりません。まあこれからも選手ではなくとも別のカタチで陸上界に関わっていくそうですから、彼女の活躍に期待しましょう。宮原美佐子みたいに選挙には出て欲しくないですけど。