幹事クリタのコーカイ日誌2008

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10月9日 ● 長生きもノーベル賞の条件か。

 ノーベル物理学賞に南部陽一郎、益川敏英、小林誠の3氏が同時受賞。1部門で日本人が独占という快挙に沸いた翌日に今度は化学賞に下村脩氏が受賞。暗いニュースが多い昨今、久しぶりに日本人に誇りを取り戻させるような明るいニュースでした。特にこの名古屋地方では、地元出身で名大卒業生の益川、小林両氏、また名大で研究生だった下村氏の受賞は大変な名誉であり、喜びもひとしおというところです。

 これまでノーベル賞、特に自然科学系においては京大が断トツにリードしてきました。過去の自然科学系受賞者9人のうち京大5人、東大2人、東工大1人、東北大1人。僕の知っている京大出身者はこのことを折りに触れ自慢するところがあり、まあ「アンチ東京」の阪神ファンと同じ心理かもと思ってきましたが、今回名大2人(下村氏の卒業大学は長崎医科大)が受賞したことで、この勢力図(?)に少し変化が生まれるのも名古屋人としては嬉しいところです。

 そもそも名古屋は最近のノーベル賞受賞者に縁がある土地柄でした。1987年に生理学・医学賞を受賞した利根川進氏は名古屋市生まれ。2000年に化学賞受賞の白川英樹氏は岐阜県高山で高校まで過ごしています。2001年化学賞の野依良治氏は名古屋大学理学部教授でした。2002年に物理学賞を受賞した小柴昌俊氏も愛知県豊橋市の出身です。利根川氏以降の自然科学系受賞者で無関係なのは田中耕一氏だけですし、彼も富山県出身ですから同じ中部圏です。

 こうしてノーベル賞に「かすってきた」経緯があるからこそ、今回の名大「トリオ」の受賞に結びついたと考えるのは、もちろん地元の身びいきでしょうが、それでもこの地域の研究者や学問を志す若者には大いなる刺激になることでしょう。「ものづくり」王国のこの地域で、自然科学系の学問のレベルが向上することは、そのまま日本のものづくりのレベルが上がることにもつながります。

 ところで、今回の4人の研究が発表されたのはそれぞれ随分昔のことのようです。これまでも時々見てきたことですが、受賞した当人も「そんな昔の研究で」と驚くような時間が経過しています。さすがに3年や5年では研究の評価を定めるのは難しいと思うので無理でも、10〜15年後くらいには受賞しないと、当人たちの寿命が尽きてしまいます。なにせノーベル賞の受賞条件のひとつが「本人が生存中」なんですから。50年近く前の研究で受賞した87才の南部氏なんて、失礼ながらギリギリ生きているところに間に合ったという感じです。これでは長生きもノーベル賞受賞のための必須条件になってしまいそうですね。