幹事クリタのコーカイ日誌2008

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9月16日 ● 『カンブリア宮殿』を見た疑問。

 昨晩の『カンブリア宮殿』は平成建設の社長が登場。アウトソーシングを進める大手住宅メーカーとは逆を行く「社員大工」による家づくりの話しをしていました。なかなか面白いユニークな社長で、創業20年で中堅メーカーまで業績を伸ばしてきたそのポリシーは、本人も言うように「へそ曲がり」ではありましたが、ある種の正論で、見ていて爽快感もありました。

 ただ番組の短い時間の中で、平成建設が外注化という世の中の流れとは逆行するやり方で成功しているその秘訣は完全には解き明かされたわけではないように思えました。オールマイティに何でもできる大工を社員として育てていくことで、顧客満足度を高め、住宅の質を上げ、なおかつコストを安くする。そんな夢のようなことが可能になると説明されても、だったらなぜもっと他の会社が同じことを真似しないのか、どこかに真似できないノウハウがあるのではないかと感じてしまいます。

 平成建設のやり方は住宅の工業化の反対で、手作り感あふれる「工房化」のように思われました。しかし、そのためにはコストがかかりますから、それが家の価格に反映されていないとしたら、どこかにマジックがあるはずです。それは原材料費を抑えているのか、人件費を抑えているのか、工程を省いているのか、その全てかも知れませんが、いずれにしても何らかの理由がないとおかしいのです。

 また、社員はみんな大学卒の高学歴者なのに、全員足場も組めれば型枠も作れるしカンナもかけられれば左官もできる、ユンボも運転できるしCADもできる。楽しく仕事をすれば、どんどん仕事に習熟していくと社長は言いますが、みんながみんな、そんなスーパーマンばかりだとはとても思えません。大学を出て数年頑張ったくらいでは、大工に限らずどんな仕事だって普通は「まだまだ」です。まして職人技をいくつも同時に学ぼうとすれば、全てが中途半端になってもおかしくありません。

 だから平成建設の社員たちがあれもこれもできると言われても、「できる」レベルを問いたくなってしまいます。本当にちゃんとできているのかな、と。どんな仕事だってレベルの差、腕の良い悪いは確実にあります。オールマイティに何でもできるということは、どれも中途半端で大した腕ではないということは考えられないのでしょうか?

 ただ平成建設の社員たちが、あれもこれもやって家作りにトータルに関わっていくのが「楽しい」というのはよくわかります。我々広告制作者も、例えばコピーライターはキャッチコピーだけ考えているよりも、デザインもプロモーションも媒体もと、広告全体を考える方が楽しいし面白いのです。そういう意味では平成建設の社員は幸せだろうなと思いました。