幹事クリタのコーカイ日誌2008

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9月10日 ● フェデラー全米5連覇。

 大会が始まる前の予想ではランキング1位に上がり、北京五輪でも金メダルを獲得したナダルが、全米5連覇を狙うフェデラーを阻んで初優勝を遂げるのではないかと思われていました。僕自身は今年最後のグランドスラムタイトルを何としてもフェデラーが取りにくるのではないかと考えていましたが、それにしても両者の力は拮抗しているとみていました。

 ところが実際にはナダルは準決勝でマレーに敗れてしまい、決勝はフェデラーがそのマレーを簡単にストレートで下して、あっさりV5を達成してしまいました。フェデラーの優勝は見事だと思いますが、ナダル相手ではなかっただけにファンとしては少々物足りない思いが残りました。

 今年のグランドスラム大会を振り返ると、フェデラーの不振(と言っても普通の選手なら好成績ですが)、ナダル、ジョコビッチの成長が際立っていました。しかし、それを演出したのは実はフェデラー自身だと思います。昨年末に患った病気により練習不足を否めなかったフェデラーは、結局それを立て直すのに半年以上を要したということです。全豪でジョコビッチに負け、全仏でナダルに完敗したのは、明らかにフェデラーの調子が本調子ではなかったからです。

 ウィンブルドンでもナダルに負けてしまいましたが、あれほどの名勝負を繰り広げることができたのはフェデラーがようやくこのあたりから調子が上がってきた証拠でもありました。オリンピックはもともとフェデラーは苦手としており、ダブルスで金メダルを取っただけでも十分。全米でようやく本来の調子を取り戻したと言って良いでしょう。ここから最終戦のマスターズに向けて、きっとフェデラーはどんどん勝っていくことと思います。

 ナダルについては逆に全仏、ウィンブルドン、北京五輪と全てが良い方向に転がりましたが、これからが正念場だと思います。ランキングもついに1位になり、チャンピオンとして追われる立場、守る立場になりました。まだ若く攻撃的なナダルが守りに入ったときに、そのプレッシャーに負けないプレーができるかどうか。フェデラーのような精神的円熟を達成しないと、上下から挟撃される立場だけに苦しいと思います。

 そのナダルを追いかける若きファイターたちの存在が、来年のテニス界を面白くしそうです。3位のジョコビッチや、今大会で4位に上がるマレーを筆頭に、デルポトロやガルビスも来年は一気にブレイクしそうですし、ドナルド・ヤングや錦織圭らジュニアから上がってきたばかりの選手たちも楽しみです。20才前後にこれだけ才能ある選手が固まっていると「ニュー・ニューボール世代」と名付けたくなるほどです。

 本家の「ニューボール世代」と言われたフェデラー、ロディック、ヒューイット、サフィン、フェレーロらグランドスラム優勝経験者が20代後半になりすっかりベテラン扱いされ、ナダルですら年下の選手に苦しめられるようになった男子テニス界。年齢も国籍もプレースタイルも多岐にわたる多士済々の才能のぶつかり合いが繰り広げられて、ますます楽しみになってきました。