幹事クリタのコーカイ日誌2008

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8月19日 ● サザンが嫌いな理由。

 Mっちゃんは音楽好きです。しかもオーディオマニアで自宅のオーディオルームに高級オーディオセットを持っています。クラシックのファンなので、それもまあありかと思っていたら、実はユーミンのファンだというので驚いてしまいました。Mっちゃんによれば高級オーディオで聴くユーミンもなかなか良いものらしいですが、僕にしてみればユーミンはラジカセかカーオーディオで聴くものだと思います。

 で、ユーミンは大好きなMっちゃんですが、サザンオールスターズは嫌いなんだそうです。僕たちの世代ではユーミンとサザンは「青春の音楽」ですから、特別好きではなくても「嫌い」という人はあまりいません。いわゆる「普通に好き」が大半でしょう。

 なんでサザンは嫌いかというと「うそ臭い」んだそうです。「パロディみたいで本気で作っているのかと思う」んだとか。僕は秋元康が書く詞にいつもそう感じます。本気ではないとは思いませんが、アーティストが作ったものではなく、マーケティングを考えた企画屋が作ったようにしか感じられません。もちろん、それがとても巧みに作られていることはわかりますが、ついつい「騙されないぞ」と思ってしまいます。

 Mっちゃんはサザンの楽曲にも同じようなことを感じるらしいのです。まあわからないでもありませんが、それを言い出すと、日本のロックアーティストなんてほとんど欧米のパロディ(もしくはパクリ)だと言われかねませんし、サザンの場合はそれを上手に日本的にアレンジしていると思うので、売れるのはよくわかります。

 ただよくよく話を聞いてみたら、Mっちゃんの場合は、単にサザンに対する音楽的な批判ということではなく、それ以上にサザンに特別な感情があることがわかりました。実はMっちゃんはサザンの後輩だったのです。同じ大学の同じ音楽サークルに属していて、Mっちゃんが大学に入った年にサザンがデビューしていたわけで、実際にサークルの在籍時期が重なっていたのです。

 Mっちゃんはいい加減な性格ですから、サークルに入っても音楽に真面目に取り組まず、サークル内のイベントや宴会、お笑い担当だったそうです。やっていたのは音楽ではなく、サーフィンやマージャンやスキーといった「ちゃらちゃら」した遊びにサークルのメンバーを引き連れていく役割だったとか。だから音楽については真面目じゃないし実力もないということでかなり引け目を感じていて、大学時代の後半はほとんど演奏もしていなかったそうです。

 そんなサークル内の落ちこぼれだったために、同じサークルの中からプロデビューして、さらにはこんな日本を代表するようなビッグスターになったサザンに対して、素直な気持ちになれずに「嫌い」「下手」「薄っぺら」「ニセモノ」などというネガティブな言葉を貼り付けているようです。サザン嫌いはコンプレックスゆえの僻みだったのです。

 実はMっちゃんは後輩として先輩の桑田たちと飲みに行ったこともあるそうです。今でもテレビで見ても呼び捨てできずに「桑田さん」と呼んでしまうとか。そんな関係だったのなら、女の子を口説くときにもネタにできたはずなのに、過去に一度もサザンとの関係をネタに使ったことはないそうです。それどころか僕たちに対してさえ、初めてそんな話を明かしたほどで、それだけサザンに対して屈折した感情があるようです。

 あのお気楽で何にも考えていないようなMっちゃんをこれだけ屈折させるのですから、ある意味サザンはすごいと思います。誰でも知っているような有名人というのは、その強烈なオーラで周囲の人間に影響を与え、その人とほとんど関係ないような人の人生にまで何らかの影響を及ぼすものなんですね。