幹事クリタのコーカイ日誌2008

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6月26日 ● 「鉄人」杉山愛に国民栄誉賞を。

 クルム伊達公子と錦織圭のお陰で最近日本におけるテニスへの注目度が上がっているわけですが、今の日本のテニス界で最高のアスリートはやはり杉山愛をおいて他にありません。過去にグランドスラムを4度(女子ダブルス3回、混合ダブルス1回)も制しているだけでも凄いことなのに、今年のウィンブルドンに出たことで、グランドスラムに57大会連続出場という男女を通じて世界歴代トップという大記録を打ち立てました。

 一口に57大会と言いますが、1年に4回しかないグランドスラムですから何と14年間、一度も欠場をしなかったのです。日本で「鉄人」と言えば昔は衣笠、今なら金本と言った野球選手を思い浮かべがちですが、杉山の世界記録はまさに「鉄人」の偉業です。

 野球の連続試合出場でもそうですが、こうした記録を作るのに必要なのはただ怪我や病気をしない丈夫な体があれば良いというものではありません。もちろん、それも大事なことですが、その前にまず試合に出られるだけの実力が必要です。しかも野球なら先発レギュラーでなくても監督の温情で代打出場もできますが、テニスのグランドスラムの場合はランキングという厳然とした物差しがあります。常にTOP100をキープしていないと出たくてもグランドスラムには出られません。

 その上、テニスの場合は個人競技ですから、誰も助けてくれないし温情采配もありません。ちょっとした不調や故障でしばらくツアーから離れたら、あっと言う間にランキングはダウンしてしまいます。だから杉山がグランドスラムに14年間出続けたということは、その14年間ずっとツアーをコンスタントに回り続けていたということです。しかも杉山は単複両方の試合に出ますから負担も2倍。さらに加えてテニスはゴルフのように国内ツアーではありません。舞台は世界。ニューヨークにパリ、ロンドンだけではなく、マイアミとかチューリッヒとか北京とかバンガロールとかドーハとか、とにかく全世界を転戦するのです。毎週どこかの街の空港、ホテル、テニスコート。それを繰り返しながら、それでも体調を壊さず、メンタル面もきちんと維持して試合に臨み続ける14年間。それは想像を絶する努力と節制が必要だろうと思います。

 僕は今の仕事を放り出して何でも好きな仕事につけるとしたら、杉山愛のようなテニス選手のチームスタッフとして一緒に世界ツアーを回ってみたいと思いますが、実際にコートに立つわけではなくても、果たしてそんなハードな生活を14年間も続けられるかどうか自信がありません。多分2〜3年(もしかしたら1年)で音を上げて「日本でのんびり暮らしたい」と思いそうです。

 1回戦で18才の伸び盛りの選手を見事に撃破した33才の杉山は、まだまだこの記録を伸ばしそうです。衣笠が国民栄誉賞なら、杉山だって貰っても良いと僕は思いますけどね。