幹事クリタのコーカイ日誌2008

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6月18日 ● 羽生善治「永世名人」に。

 注目の将棋名人戦で、挑戦者の羽生善治二冠がライバル森内俊之名人を4勝2敗でくだして名人位を奪還しました。これで羽生は名人通算5期目となり、「永世名人」の称号を獲得、晴れて19世永世名人になります。かつて七冠を独占した羽生にしては随分永世位を獲得するのに時間がかかりましたが、それだけに重い栄誉となったと思います。

 羽生が七冠を独占しようと昇竜の勢いだった頃に唯一上の世代で対抗していたのが谷川浩司でした。17世永世名人の谷川と羽生はほぼ10才の年齢差があります。谷川と羽生の争いは「世代間抗争」であり、かつては谷川と中原誠が、またその前には中原と大山康晴が争ったのと同じ構図です。これは常にどんな時代でも起こる宿命みたいなものです。

 そして時代は遂に羽生時代へと変わりましたが、大山や中原と違ったのは、羽生を追って同世代の俊英たちが続々と登場し羽生の独走を許さなかったことです。もちろん大山には升田幸三、中原には米長邦雄がライバルとしていましたが、羽生の場合は層の厚さが違いました。森内、佐藤康光二冠や深浦康市王位、丸山忠久らが羽生の前に立ちはだかり、「最強」と思われた羽生を苦しめ、羽生から次々とタイトルを奪い取っていったのです。

 さらには渡辺明竜王を筆頭とするもう一世代下の若手の台頭もあり、今や将棋界はすっかり「羽生包囲網」が完成しています。こうなると順位戦を勝ち抜かなければならない名人位は挑戦者になることすら難しく、羽生が足踏みをしている間に森内に追い越されてしまい、18世永世名人は森内の手に渡ってしまいました。羽生とすればどれだけタイトルを獲得しようが「永世名人」になれないのはかなり悔しかったことだろうと思います。

 羽生は若い頃と違って最近は勝負よりもカタチの美しい将棋を指そうとしているように感じますが、今回ばかりは泥臭く勝負に拘りました。その典型が第3局の大逆転勝ちで、粘りに粘って負けに等しいような将棋を挽回しました。次にいつ回ってくるかわからないチャンスを最大限生かそうという執念の表れでしょう。

 これで羽生は史上初の「永世六冠」となり、残す「永世位」は竜王だけになりました。これもすでに通算6期獲得しており、規定の通算7期での「永世竜王」獲得にリーチがかかっています。「永世七冠」という空前の偉業がなるかどうか、羽生の「最強」復活に要注目です。