幹事クリタのコーカイ日誌2008

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5月22日 ● スピーチで逆転負け。

 昨日、地元の広告業界関係者の総会があり、その席上で僕と同僚のアートディレクターが表彰をされました。昨年僕が考えたその団体のPR広告が最優秀作品として採用されて制作したからです。そしてもう1つ別のテーマで作られた広告もあり、他社の広告制作担当者も僕たちと一緒にその席で表彰されました。

 表彰の後にそれぞれ代表者がスピーチを2〜3分してくれと依頼されていたので、まず先に僕が話をしました。広告を考えるよりも喋ることの方がむしろ得意な僕としては、3分程度のスピーチは短すぎて物足りないくらいです。その場に出席しているのは名古屋の広告会社各社のトップクラスなのですが、長年この業界にいるお陰で知り合いの顔がいくつかあったので、リラックスしながら適当に知り合いをいじって笑いも取って、自分としても「大変よくできました」の花丸が貰える出来だったと満足して席に戻りました。

 次に他社のコピーライターの女性の番です。彼女は控えにいる時から可哀想なくらいに緊張していて、書いてきた原稿を何度も読み直して練習していました。僕は1時間半の講演でもメモを見ずに喋ることができますが、彼女は2分足らずのスピーチでも覚えられるか不安なようです。僕の立て板に水のスピーチの後では辛いだろうな、順番が逆だったら良かったのに、などと思って見ていたら、案の定ほぼ棒読みで喋っていた彼女は途中で頭が真っ白になったのか、言葉出てこなくなってしまいました。

 もじもじとして困り果てた彼女は結局ポケットから原稿を取り出して確認し、そうだったそうだったと自ら頷き、ポケットに原稿をしまいこむと、おもむろに文章の途中からまた喋り始めました。その様子があまりにも初々しくおかしく、会場は笑いの渦です。彼女は笑われながらも懸命に覚えてきたスピーチを訥々と最後まで喋って、頭をぴょこんと下げて壇上から降りました。もちろんみんな暖かい拍手です。

 完全に僕のスピーチは食われてしまいました。順番が逆で良かったのは僕の方でした。あんなスピーチの後では、いかにも喋り慣れた業界人くさいスピーチは白けられてしまったかも知れません。彼女が何を喋ったかなんてことはほとんど誰も覚えていませんが、その雰囲気だけは十分に場を和ませて印象を残しました。まだまだ僕は修行が足りません。もし彼女が狙ってあれをやったのなら相当な手練れです。多分天然ボケだったから受けたのだろうとは思いますが。