幹事クリタのコーカイ日誌2008

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3月27日 ● イギリスがインドに乗っ取られる。

 インドのタタ・モーターズという自動車メーカーがあります。日本ではあまり知られていませんが、商用車の生産台数では世界5位というメーカーで、最近では「ナノ」という小型車を10万ルピー(約28万円)で売り出すと発表して、世界を震撼させました。日本のクルマは高くなる一方ですから、こんな価格で新車が販売されたら、そりゃかなり日本車のマーケットを食われることでしょう。

 ところでそのタタが何とジャガーとランドローバーという高級ブランドをフォードから買収することになりました。と言っても、クルマに疎い人には何の話がさっぱりわからないでしょうから、少し説明すると、ジャガーとランドローバーはともにイギリスの高級車でした(ランドローバーが作っているのがレンジローバー)。ところがイギリスのクルマというのはブランド力はあっても企業としては弱体だったために、アメリカのフォードに買収されていたのです。同じようにイギリスのミニもドイツのBMWに買収されています。

 ところがかつてはアメリカ自動車会社のビッグ3と言われたフォードも、今は経営再建の途中。そこでスリムになるために傘下にあるジャガーとランドローバーを売りに出すことにしたのです。そこで手を挙げたのが、いま乗りに乗っているインド経済のパワーを背景にしたタタだったというわけです。フォードはボルボも持っていますから、今後はボルボをどこに売るかまた注目されることでしょう。

 ところでタタはインドでジャガーやランドローバーはイギリス。かつてインドはイギリスの植民地でした。イギリスはインドから搾取するだけ搾取した過去がありますが、それが今や経済力で逆転して、宗主国の名門企業が植民地の企業に買われてしまう時代になったのです。タタがフォードからジャガーとランドローバーを買ったのは、そういう歴史的経緯があったればこそでしょう。

 実は去年、タタ財閥傘下のインド鉄鋼最大手タタ・スチールが、英蘭系の鉄鋼大手コーラスを買収しています。今回の買収劇はこの流れの上にあるわけで、今後もますますイギリスがインドに乗っ取られていくことになりそうです。