幹事クリタのコーカイ日誌2008

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1月12日 ● 「松下」を捨てるのが遅かったのでは?

 松下電器が社名を「パナソニック」に変えるとともに、「ナショナル」というブランド名も廃して全て「パナソニック」ブランドに統一すると発表しました。すでに20年前からそのプランはあったそうですが、やはり偉大なる松下幸之助のことを考えると、この決定をするまでにそれだけの歳月が必要だったのでしょう。

 確かに「松下」「ナショナル」は日本国内ではあまねく浸透している、まさに「ナショナルブランド」ですから、簡単に捨てることは勇気がいったでしょう。ただ、ビジネス戦略として考えたときには、やはり20年前に決断しておくべきだったと思います。20年前のバブル期、ジャパン・アズ・ナンバー1と謳われてまだ余裕があった時代に切り替えていれば、松下電器はここまでソニーやサムソンに海外市場で遅れを取ることはなかったかも知れません。

 それがわかっていながら、結局ここまでズルズルときてしまったのは、やはり松下電器の「幸之助依存症」が災いしたからでしょう。幸之助が死んでからもなお、そのカリスマ性に依存してきた企業体質が、判断を20年遅らせてしまいました。ブランドとしての「パナソニック」の立ち遅れを取り戻すのに一体どれだけの時間と費用がかかることか。たださえ日本の家電メーカーの海外での競争力の弱体化が言われている中で、300億円かけてブランド統一しても簡単に成果は表れないことでしょう。

 松下に限らず日本の企業は総じて「ブランド」に対する認識が甘いと思います。ブランドというのは、何もシャネルやグッチやエルメスのようなファッションのハイブランドのことを言うだけではありません。「良いモノ」を「安く」作っていれば売れるんだと未だに考えているようでは、それこそ20年遅れています。そこにどんな「ブランド価値」が付随してくるかがポイントである、なんてことは、随分前からマーケティングの世界では言われ続けているのですから。

 まあ松下電器ほどの「宣伝上手」と言われたトップ企業でも、ブランド構築の点ではここまで失敗をするのです。もっと保守的で頭が固い会社が、そうそう簡単に「ブランドマーケティング」なんてものに真剣に取り組めないのかも知れませんが、今回の一件をよくよく考えて、もう少し皆さんお金と知恵を出してはどうかなと思います。