幹事クリタのコーカイ日誌2007

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12月13日 ● 勤務先は必要な情報か?

 母校の高校の創立130周年事業のひとつとして作られた同窓会名簿。5年ごとに発行されてきたのですが、今回は個人情報保護法の元、そもそも名簿を作るかどうかが議論になったそうです。結果、やはり必要だという意見が多数を占めて、従来通りに第1回卒業生の坪内逍遙、二葉亭四迷、加藤高明らから始まる分厚い名簿が完成。昨日我が家にも送られてきました。

 もっともさすがに勝手に全員の氏名・住所・電話番号・勤務先を掲載するのではなく、載せて欲しくない人は希望を出すようにということになっていましたが、ほとんど掲載を拒否する人はいなかったそうで、ざっと見る限りは住所不明者を除き、ほとんど全員の氏名と住所・電話番号までは記載されているようです。

 ただ差があるのが勤務先。上の世代になればなるほど、勤務先は詳細に載っているのですが、世代が下がるほどに空白が増えていくのです。特に昭和末期〜平成以降の卒業生(今の30代以下)になると、ぐっと勤務先の表記が減り、載っているのは大学など研究機関に勤務しているか、医者か弁護士くらいです。たまに大手企業勤務の場合も載っていますが、それ以外はほぼ空白です。

 試しに計算してみました。1965年卒の1組は55名(ベビーブーマー世代ですから多いです)。住所不明4名、永眠2名を除く49名のうち勤務先が書かれていないのはわずか9名。勤務先空白比率16.4%。1975年卒の1組は46名。住所不明11名。残る35名中勤務先空白は10名、28.6%。1985年卒1組45名。住所不明12名。勤務先空白22名、66.7%。そして1995年卒1組44名、住所不明10名、勤務先空白29名で実に85.3%。

 もちろん長く同窓会の会員をやっているほど、情報は同窓会にたまっていきますから、新しい会員の情報が少ないのは当たり前と言えば当たり前です。また昔は女性が少なかったのに、下の世代ほど女性が比率的に多いので仕事をしておらず勤務先が書かれていないと言うこともあるかも知れません。それにしても、若い世代の勤務先空白率の高さは驚くほどです。

 これは若い世代ほど、勤務先なんて知られたくはないし不必要な情報だという意識が高いということでしょう。住所と電話番号はこれがないと連絡できないから同窓会名簿に当然必要な情報です。しかし、勤務先は単にその個人の属性を示しているだけで、必ずしも同窓会名簿に不可欠の情報ではない、むしろ秘密にすべき重要な個人情報だと考えられているのだと思います。

 ところが上の世代は、勤務先というのはプライバシーではなく「公」の情報だと考えています。仕事は「公私」の公か私かと問われれば、上の世代ほど「公に決まっている」と思うでしょうが、若い世代はむしろそれは「個人的なこと」だと思っていそうです。少なくとも同窓会名簿には「そんなの関係ねぇ」と。その意識の差が勤務先欄にくっきりと表れています。

 今回の名簿ではメールアドレスは議論の末、敢えて掲載しなかったそうです。名簿作成に携わったのは僕たちよりもずっと上の先輩方でしたから、そういう結論に達したのでしょうが、もし今の30代以下に名簿を作らせたら、きっと勤務先を削ってでもメールアドレス欄を設けたのではないかと思います。どう考えたって、同窓会の連絡をするには今はメールが一番便利で楽ですから。同窓会の幹事をしている僕からしても、実は最も必要かつ重要な情報を削除してしまったんじゃないかと思います。できたら次回は紙媒体ではなくデジタルデータでメールアドレスを加えて発行してもらいたいものです。