幹事クリタのコーカイ日誌2007

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11月28日 ● 2人の監督、岡田とピクシー。

 倒れたオシム監督の意識がようやく戻ったという発表があり、それはとても喜ばしいことですが、間近に迫るW杯予選はオシムの回復を待ってはくれないので、協会は岡田武史を代表監督に選びました。緊急事態でいま代表を任すことができるのは岡田しかいないというのは、正常な判断です。そして、岡田はよくぞ引き受けたものだと思います。

 1997年、岡田が加茂監督の後にいきなり代表監督になった時とは、代表を取り巻く状況は大きく変わりました。あの時は98年W杯に出ることさえできれば良かったのですが、その後のトルシエ時代の16強を経て、今はアジア代表になることが最低限のライン。できることなら決勝トーナメントに進出することを期待されています。ハードルがかなり高くなってしまったのです。

 ただ岡田も当時の岡田とは違います。全く監督経験のないままに代表監督になったあの時に比べ、今の岡田は札幌や横浜で実績を積み日本を代表するサッカー監督の1人に成長しました。あらゆる面でその監督としての能力は向上していることでしょう。もう「岡ちゃん」ではないのです。

 問題はオシムの路線をどこまで継承するのかということです。加茂から岡田へのバトンタッチは、岡田が加茂のスタッフだったからある意味方向がぶれずに済みました。しかし今回は違います。オシムと岡田は明らかに違う監督なのですから、目指すサッカーも違えば選ぶ選手も変わることでしょう。時間のない中で、どこまで岡田がやりたいサッカーを作り上げることができるか。恐らくは予選を戦いながら方向を修正し調整していくしかないでしょう。日本サッカーの正念場です。

 さて、低迷する名古屋グランパスエイトの新監督にいよいよピクシーことストイコビッチが就任します。名古屋のサポーターにしみればまさに切り札の登場です。もちろん監督経験のないピクシーに対する不安は大いにありますが、彼のファンタジスタぶりを間近に見てきた名古屋のサポーターだけに監督としての期待の大きさも別格です。

 僕がピクシーに期待するのは「強い」グランパスではなく「美しい」グランパスです。かつてベンゲル監督の元でピクシーを中心に天皇杯を制した頃のグランパスのサッカーは何よりも「美しい」攻撃サッカーでした。引いて守ってカウンターという泥臭いサッカーで勝つよりも、あの華麗な攻撃的サッカーで負ける方がグランパスという気がします。

 幸い、ピクシーも記者会見でそういうサッカーを目指すと断言してくれました。問題は今のグランパスにピクシーがいないことです。ファンタジスタは育てられるものではないですし、やはりどこかから連れてくるしかないんでしょうね。そのファンタジスタが現れた時こそ、真のグランパスサッカー復活の時です。