幹事クリタのコーカイ日誌2007

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11月19日 ● リアル版『フラガール』。

 昨年公開された映画『フラガール』は昨今元気な日本映画を象徴するような傑作でした。ストーリーとしてもよくできていたし、ダンスシーンなど見せ場も多く、なにより主演の松雪泰子と蒼井優が魅力的でした。この映画の松雪は大人の女の魅力全開で、思わず惚れてしまいそうです。

 その『フラガール』は実話がベースになっていることはよく知られていると思いますが、昨晩の「NHKアーカイブス」で、1971年、常磐ハワイアンセンターがオープンしてから5年後に取材したドキュメンタリー「人間列島 みちのくの椰子の葉陰で」を放送しました。そこに映っていたのは、まさにリアル版『フラガール』の世界でした。

 映画で見た常磐ハワイアンセンターや、蒼井優たちが踊ったダンスが、どれほど当時の本当の姿に近かったのかがよくわかりましたし、常磐炭鉱の様子やダンサーの女の子たちが稽古をしていた合宿所の様子も、映画は実によく再現していました。

 このドキュメンタリーのためにNHKが取材した当時は常磐ハワイアンセンターの最盛期で、年間150万人を超える人が利用していました。石炭からレジャー施設へと大きな業態のチェンジを断行し大成功した事例だったわけですが、その陰では長年住み慣れた炭鉱を離れなければならない人たちの苦悩もきちんと描いていて、時代のどうしようもない移り変わりと、そのせつなさやるせなさも伝わってきました。

 その後、1980年代には常磐ハワイアンセンターも「ダサい」レジャー施設の代名詞として斜陽化していくわけですが、1990年に「スパリゾートハワイアンズ」として大幅なリニューアルを行い、現在では最盛期に近い集客を誇っているとのことです。

 1960年代から2000年代までの40年を見通すことができる今だからこそ、このリアル『フラガール』を改めて見ると、日本という国と、そこに住まう人々の生活や意識の激しい変動ぶりがよくわかります。僕はドキュメンタリーの中に出てくる小学生の子どもたちと同じ年頃なんだと思うと、自分がとても古い歴史の中の人物になってしまったかのような気分でした。