幹事クリタのコーカイ日誌2007

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11月12日 ● 国立大の授業料免除制度。

 東大が低所得家庭の学生に対して授業料を免除するというニュースが先頃ありました。年収400万円未満の学生の授業料を全額免除するということで、基本的には「良いことだ」というニュアンスで報道されているようです。

 しかし、ニュースでも報じられているように、これまでにも国立大では低所得家庭の授業料免除制度はありました。ただそれは単純な世帯収入による線引きではなく、様々な事情を勘案して免除額を決定していて、確かに算定方法が複雑でわかりにくかったことは確かです。でも複雑だからと言って悪いとは限りません。なぜなら、年収というのはサラリーマンならともかく、自営業の場合いくらでも見かけの年収を少なくすることができるからです。税金対策のために会社組織にして、自分たちは安い報酬を貰っているだけで、ほとんど必要なものは会社の経費で購入しているような自営業者はいくらでもいるでしょう。見かけの年収は200万円なのに、ベンツに乗っていたり海外に別荘を持っていたりする人もきっといそうです。そんな家庭の学生まで授業料を免除する必要があるのでしょうか?

 それにサラリーマン家庭で年収が同じ400万円と言っても、一人息子の場合と、兄弟がたくさんいたり、介護状態の老人や障害者がいたりしたら、全然事情が変わってきます。これまでの複雑な制度は、そういう点も考慮して、本当に免除が必要な学生に対して援助の手をさしのべるものでした。

 なんでこんなことに僕が詳しいかと言うと、実は僕もこの制度を利用して大学時代は授業料を全額免除してもらっていたからです。我が家は基本的にかなり貧乏だったので、僕はすでに高校時代から育英会の奨学金を貰っていました。大学も「浪人ダメ、下宿ダメ、私立ダメ」という条件なら進学しても良いけれど、基本的には自分のお金で大学に通えというのが親の方針でした。

 なので、僕は引き続き大学でも奨学金を貰い、さらにこの授業料免除制度も自分で見つけだして申請して大学4年間ずっとタダで大学に通っていたのです。もちろん親から一切の資金援助はなかったので、教科書などを買ったりコンパ(合コンではありません。研究室などの飲み会です)に出るために学生時代はアルバイトに明け暮れていてサークル活動ひとつできませんでした。ちなみに、弟もこの制度を利用して授業料免除を申請しましたが、僕の時には下に弟がいるから簡単に全額免除になったのに、弟の時には僕がすでに就職して独立していたために、親の負担が少ないという理由で半額免除にしかなりませんでした。

 東大は年収400万円未満で免除という新制度で適用を受ける学生は、これまでの制度より1〜2割増え、費用も約9000万円増を見込んでいるそうです。東大は「節電などこまめな節約で捻出する」らしいのですが、僕はまず授業料を免除してもらいたい学生や親が「こまめな節約」をして学費を捻出しようとする姿勢があるかどうかが問題だと思います。本当は裕福なのに年収を誤魔化している自営業者が笑うだけ、という制度改革にならなければ良いのですが。