幹事クリタのコーカイ日誌2007

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11月3日 ● ドラゴンズファンの「空気」。

 落合監督の山井交代問題。中日の日本一よりもネットなどでは話題になっているようですし、いろいろなところで賛否両論を聞きますが、特徴的なのはより強く落合批判をしている人は中日ファンではない、ということです。玉木正之が「スポーツに対する冒涜」だとか、やくみつるが「空気を読めない采配」だとか言っているようです。しかし、僕も含めて中日ファンは「そりゃ心情的には山井に完全試合をやらせてやりたかったけど、悲願の日本一のためには交代も仕方ない。あれが勝つためには最善手であることは確かだし、岩瀬が最後に締めるのが中日の野球だし、何より落合というのはそういう監督だから」と思っています。

 つまり、それだけ中日ファンにとって日本シリーズで勝って日本一になるということは「重い」のです。長年中日の目標は「打倒巨人」でした。はっきり言って、巨人にさえ勝てば他のチームに負けても構わないと公言するファンがたくさん存在するほど、みんなアンチ巨人です。それは昔は巨人が嫌味なくらいに強かったからとか、親会社がライバルであるからというだけではなく、何事によらず名古屋の風上に立とうとする「東京」という存在そのものへの反発心が根底にあるからです。

 ところがその巨人がすっかり弱くなってしまいました。今までは「日本一強い」巨人に勝ってセ・リーグで優勝さえすれば日本シリーズなんて「おまけ」みたいなものだと思っていたのに、巨人が弱くなって「打倒巨人」が目標にならなくなってしまったのです。しかもいつの間にか「最も日本一から遠ざかっている球団」になっているし、「短期決戦に弱い」というレッテルまで貼られていました。こうして中日の「打倒巨人」のスローガンが「日本一」に切り替わったのです。

 しかも今回は制度が変わったために、リーグ2位での日本シリーズ出場です。制度改変の反対論者の急先鋒だった落合監督としたら、その制度に救われての日本シリーズで負けてしまってはカッコがつきません。何としても勝って日本一になる、それだけがファンに対する恩返しだと考えたことでしょう。落合のその心情を理解しているからこそ、中日ファンは山井から岩瀬への継投を受け入れられるのです。

 落合采配を批判している人たちは「ファンは完全試合を見たかった」と言います。中日ファンももちろんそれは見たかったですが、それ以上に中日の日本一を、それも名古屋での胴上げを見たかったのです。完全試合は見たいけど、中日の胴上げはどうでも良いという「ファン」(?)の人たちとは違うのです。中日の監督である以上、中日ファンのために落合が采配を振るうのは当然です。阪神ファンであることを公言しているような有名人に批判されても落合は痛くも痒くもないでしょう。

 僕は昨日も書いたように、山井が1本ヒットを打たれてからの交代の方が良かったと今でも思っていますが、だからと言って落合を批判しようとも思いません。あれはあれで監督としての決断なのですから、もちろん「あり」です。なにせベンチの中のことは誰よりも監督が一番把握しているのですから。僕の意見が全ての中日ファンと同じだとは言い切れませんが、名古屋の「空気」はそんなところだと思います。