幹事クリタのコーカイ日誌2007

[ 前日翌日最新今月 ]


 
10月26日 ● あなたの全ては簡単に盗まれる。

 昨日会社の後輩Yが「クリタさん、携帯の番号教えてください」と新しい携帯電話を持って席にやってきました。買い替えたからアドレス帳のデータを作り直しているのかと思ったら「いや、携帯なくしたんで、これ新しい奴です」。なるほど、なくしてしまったらデータを移すことはできません。「と言うか、携帯だけじゃなくて全て丸ごとなくなったんです。人生で一番落ち込んでいますよ」とのこと。何がYに起きたのでしょうか?

 実は火曜日の夜に泥酔したYは、自宅そばでタクシーを降り、自宅に辿り着く前に道端で寝てしまったらしいのです。そしてハッと目覚めて家に帰ろうとした時にバッグがないことに気づきました。酩酊状態なので最初は「あれ〜おかしいな〜〜」って感じでフラフラ歩いていたのですが、突如として正気に戻り「これはヤバイ!」と焦り始めました。バッグの中にはYの全てが入っていたからです。

 彼のバッグに入っていたもの。家の鍵。財布(の中には現金とクレジットカード数枚と免許証)。健康保険証。社員証。社員バッヂ。会社支給の手帳。名刺入れ。認め印。携帯電話。主な貴重品だけでもそれだけあったそうです。大ピンチです。鍵がないから家に入れません。免許証から住所が知れたら空き巣に入られます。クレジットカードを使われます。健康保険証でサラ金から借金されます。社員証や名刺で名前を騙られます。社員バッヂをネットオークションで売られます。認め印で銀行から預金が引き出せます。手帳と携帯電話から個人情報が漏れます。どの1つを取り上げただけでも大変なことになるのに、それだけの危機がまとめて現実のものになってしまったのです。

 幸いYの姉に預けてあった合い鍵で家には入ることができました。後は警察に被害届を出し、クレジットカード会社全てに停止要請の連絡をし、会社にも社員証等の紛失届を出しました。免許証がないと身分証明ができないので、再交付のために運転免許試験場まで行かなければならないし、家の鍵もすぐに替えないと危ないし、銀行から預金を引き出せないように手続きも必要です。実際、バッグを紛失したその夜に10万円ほどクレジットカードを使われてしまいました。拾った人が悪用しているのか、それともYが寝ているのを見てバッグごと盗んだのかはわかりませんが、少なくとも善人が持っていったわけではないようです。

 とりあえず思いつく限りの対応は速やかにやったYですが、バッグの中身をどういう風に悪用されているかわかりませんから、まだまだどんな不幸が襲いくるか見当もつきません。当分の間は祈りながら待つしかないでしょう。

 それにしてもこういう時に備えてリスクマネジメントは本当に考えておかなければなりません。対策は「バッグをなくさないようにする」ではありません。人間生きている以上そういうミスも起こると覚悟して、その時に被害を最小限に抑えるような対策が必要です。使わないクレジットカードを持たないとか、財布は2つ別の場所に持っておくとか、携帯電話にはロックをかけて読まれないようにしておくとか、緊急時の連絡先を確保しておくとか。僕自身、Yと似たようなバッグの内容だけに、とてもこの悲劇を他人事とは思えませんでした。いや、怖い怖い。