幹事クリタのコーカイ日誌2007

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9月19日 ● 柔道の国際化と谷亮子の順応性。

 谷亮子が世界柔道で金メダル。これで7回目の優勝です。2005年大会を出産のために欠場しているので「7連覇」という表現は正しくないと思うのですが、出た限りは優勝しているのですから彼女が「無敵の女王」であることには間違いありません。

 「谷でも金、ママでも金」の金メダルは本来オリンピックでのことを言っているのだと思いますが、来年の北京五輪に向けて谷が順調に再スタートを切ったことは確かです。誰しも感じることですが、結婚はまだしも出産と育児を乗り越えてトップアスリートに戻る、しかも筋力と持久力と瞬発力と何より強い精神力が必要な格闘技の世界で頂点を維持する彼女のモチベーションの高さには驚かされますが、それ以上に僕が感心するのは谷の順応力です。

 それは単に生活環境の変化に対して順応しているというだけではなく、柔道自体の質的変化にもついていける順応性の高さがすごいと思います。今回の世界柔道で日本男子の不振が目立ちました。井上康生をはじめ期待された選手が軒並み早い段階で判定負け。それを審判のせいにするのは簡単ですが、本当は審判のせいではなくルールの変化のせいです。

 あくまでも「一本勝ち」こそを本来の柔道の姿だと考える日本柔道に対し、世界の「JUDO」はより明確なポイント制へとその志向を変化させています。レスリングのように、どんなカタチであれ「相手の背中を畳につけたら勝ち」というシンプルでわかりやすいルールへと国際柔道は変わってきているのです。最後に技をかけた方が有利に判定されるのも、「流れ」というわかりにくい概念ではなく、誰が見ていても、もしくは誰も見ていなくてもコンピュータが判断できるほどにシンプル化しているからです。

 そんな柔道はもはや柔道ではない、と考える「柔道家」もいることでしょう。黒帯の僕もそう思います。自分たちがやっていた柔道と、いま世界で行われているスポーツとしての柔道はかなり距離が開いてきていることを実感しています。

 ただ「ママでも金」を目指す谷亮子としては、そんな柔道であっても金メダルを獲得するためには勝っていかなければなりません。だから彼女は大ベテランであるにも関わらず、どんどん自分の柔道を時代とともに変えていき、今のポイント制柔道に見事に順応しています。それができる彼女の能力の高さと精神力の強さ、そして思考の柔らかさに感嘆するのです。

 先日の報道によると谷亮子は北京どころがその次の2012年ロンドン五輪までも視野に入れているそうです。その時に彼女は37才。でも本気でそれを言っていることが我々にも伝わってくるところが谷亮子の凄さです。