幹事クリタのコーカイ日誌2007

[ 前日翌日最新今月 ]


 
9月12日 ● 北の湖理事長の焦りと横暴。

 今から17年前。バブル崩壊直前の1990年の6月のことでした。僕が書店で「大相撲の名勝負」という本を立ち読みしていた時のことです。「お相撲、お好きなんですか?」と声をかけてきたオジサンがいました。ん?と思って声の主を振り返ってみたら、それはNHKの元アナウンサーで、特に大相撲中継の第一人者として知られる杉山邦博氏でした。そして僕が立ち読みしていたその本の著者本人でもありました。

 彼は自分の本を熱心に立ち読みしている自分の息子くらいの年齢の僕に親しみを感じてくれたのでしょう。好きな力士の話とか、思い出の名勝負などについて話を聞いてくれました。もちろん僕はその立ち読みしていた彼の本を買ってサインをしてもらいました。

 その杉山氏が何と朝青龍問題で協会批判をしたとして、取材証を相撲協会から「剥奪」されたそうです(こちら)。驚きました。この相撲協会の対応は突っ込みどころだらけ、問題だらけです。

 まず第一に、事の経過からして、杉山氏に明確な相撲協会批判の意図があったとはとても思えません。「朝青龍への処分に対しては弁護士や識者を入れて決めるべきだ」というコメンテーターの発言に杉山さんがうなずいた、というだけです。彼は何も発言していないのに「批判した」と言われてはかないません。

 第二に、コメンテーターの発言そのものも特に問題があるとは思えません。協会に対しての誹謗中傷ならともかく、極めて真っ当なひとつの意見であり、特に問題になるような発言ではありません。この程度のことにいちいち反応していたら、全マスコミ相手に喧嘩しなければならないでしょう。

 第三に、テレビ出演の際の肩書が「相撲評論家」だから記者でないので取材証を発行できない、というのは完全に言いがかりです。揚げ足取りであり、そんな子どもの屁理屈のような言い分が通ると思っているのなら、あまりにも稚拙だと言わざるを得ません。

 そして最も問題なのは、批判されたからと言って、その言論を封殺しようとする協会の態度そのものにあります。批判を受け付けないような体質は独善に陥り、結局はその組織そのものの衰退につながることは間違いありません。今の相撲協会が世間からの批判にさらされているのは、こういう独善的かつ閉鎖的体質そのもののせいだということに気づいていないのでしょうか。

 相撲協会の内部からも、この措置に首を傾げる声があるみたいです。と言うことは、北の湖理事長の強い意向で杉山氏の取材証を剥奪したということでしょう。今回の朝青龍問題がここまでこじれた原因のひとつは、北の湖理事長の動きの遅さ、対応の拙さにあったことは間違いありません。朝青龍本人や師匠である高砂親方に責任を押し付けて何とか自分への批判をかわそうとしている北の湖理事長の「焦り」が、こういう事件をも引き起こしているのだと思います。朝青龍がもしこのまま引退することになったら、高砂親方とともに、ぜひ北の湖理事長も辞任して責任をきちんと取るべきです。