幹事クリタのコーカイ日誌2007

[ 前日翌日最新今月 ]


 
6月5日 ● 悪役シャラポワ。

 日本の非テニスファンは、マリア・シャラポワというの選手をどう見ているのでしょう?今のテニスプレーヤーはシャラポワしか知らないというような人は、シャラポワの試合なんか見たことがないでしょうから、恐らくモデルもするような美人プレーヤーで、しかもセクシーなウエアを着ている一種のアイドルのように思っていることでしょう。

 しかし、実際にシャラポワの試合を見たことがある人なら、彼女はそんな可愛らしいアイドルではないことがすぐにわかります。彼女は現在のテニス界でも一、二を争うような強烈な闘争心の持ち主であり、あのルックスがなければ「野獣」とか「猛将」と呼ばれるようなタイプの選手です。

 全仏オープンの準々決勝、スイスのパティ・シュニーダーとの試合でシャラポワは2度のマッチポイントを切り抜けて素晴らしい闘争心を見せて逆転勝ちをしました。これまでの今年の全仏のベストマッチと呼んでも良いような試合です。しかし、この試合で観客を味方につけたのはシャラポワではなくシュニーダーでした。シャラポワは完全に悪役となってブーイングを浴びてしまったのです。

 パリのファンは昔から依怙贔屓が過ぎることで有名です。1999年、引退間際の旧女王グラフと当時の生意気女王ヒンギスが全仏決勝で戦った時は、観客は完全にグラフの応援に回り、ヒンギスに猛烈なブーイングを浴びせて、最後はヒンギスを泣かせてしまいました。いくらヒンギスのプレーが小癪で態度が小生意気だったとは言え、まだ10代の少女には酷過ぎる仕打ちでした。

 今回のシャラポワも決してルール違反を犯したわけではありません。シュニーダーのダブルフォルトの時にガッツポーズをしたり、シュニーダーが観客の大声でリターンを止めたのに、そのまま自分のサービスエースという態度ですぐに次のポイントに入ったり、流れがシュニーダーに移った時に切れていないラケットをわざわざ取り替えて間合いを取ったりしたというだけです。

 それらの行為は確かにフェアな態度ではなかったかも知れませんが、だからと言ってひどく責められるようなことでもありません。そうやって何としても試合に勝ちにいく執念と闘争心がシャラポワという選手の特質であり、それを失ってしまったら彼女は今の地位にはいないのですから。

 シャラポワは試合後の記者会見で「わたしはテニスプレーヤーであってマザー・テレサではない」とはっきり言い切っています。例えファンから悪役扱いされようが、勝つために全力を尽くすのが自分のテニスである、という確固たる信念が彼女を支えています。

 若い頃にいろいろとその態度で非難を浴びたテニス選手が、年齢を重ねるにつれて丸くなり人間味が出てきてファンの心を惹きつけるようなカリスマになったことがこれまでにたくさんあります。ジミー・コナーズしかり、マルチナ・ナブラチロワしかり、アンドレ・アガシしかり、マルチナ・ヒンギスしかり(ジョン・マッケンローだけは悪童のまま大人になってそれでもずっとカリスマですが)。シャラポワも5年後、10年後にはどんな人間的で深みと味わいのある選手になっているかはわかりませんが、今はこのまま悪役で勝ち進んでいけば良いでしょう。それでも単なる可愛いだけのアイドル選手よりはずっと魅力的なんですから。


とりあえず、読むたびに(1日1回)

を押してください。 日記才人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。