幹事クリタのコーカイ日誌2007

[ 前日翌日最新今月 ]


 
4月6日 ● 東大合格者数公表の理想と現実。

 いま週刊朝日やサンデー毎日では毎週のように東大をはじめとする有名大学の高校別合格者数を発表しています。昔から新聞社は本紙で学歴信仰社会を批判しながら、週刊誌では学校格差を助長するような記事を載せると批判がある特集ですが、反面読者にニーズが高く雑誌が売れるのですから、週刊誌サイドもやめることはできないと思います。

 ところでこの高校別の合格者数というのは、昔のように大学側が全合格者を高校別に発表していた時は楽でした。僕たちが受験した頃は、毎日のように新聞にその大学の合格者氏名が高校別に掲載されていたので、友人の合否を知るのも簡単でした。

 しかし学校格差を助長するし、プライバシー保護の観点からも、まず高校別の合格者数を大学側が発表しなくなり(この頃は週刊誌が大騒ぎして全合格者の高校名を独自調査して発表していたものでした)、そしてとうとう合格者氏名そのものを公表しなくなりました。現代の感覚からすれば、大学の合否なんて極めて個人的なことですから、情報を保護するのが当たり前ですが、昔はそれだけ大学合格というのはステータスであり、社会的に価値が高いニュースだったわけです。

 今では誰が合格したかもわからない以上、高校側が大学別の合格者数を発表しないと週刊誌もランキングを作ることができません。多くの高校、特に進学成績で名前を売って生徒を集めたい私立高校はもちろんその数字をすぐに週刊誌に知らせるようですが、公立高校でも特に昔ながらの地域一番の伝統進学校の中には、そんなことに協力したくないと非公開のところもあります。

 僕の出身校もずっと発表していませんでした。それは聞くところによると校長の意思だったらしく、その理想主義のためにランキング外になっていました。ところがランキングに載らないことでOBから「どうしたんだ?」という問い合わせが数多くあり、また「隠すほど進学成績が悪いのか?」と勘ぐられもしたため、校長が変わった昨年から他校に合わせて公表するようになりました。

 今まで非公開にしていた大学合格実績を2006年から公表したところ、サンデー毎日の発表した難関大学合格力(東京大学+京都大学+国公立大学医学部の合格者数を総学生数で割ったもの)が全国の公立高校で第1位だったため、今年母校を受けた受験生のレベルが一段と上がったんだそうです。これは先日同窓会事業の打ち合わせに行った時に、母校の現場の先生から聞いた話です。「今年は本当にレベルが今まで以上に上がっていて、内申点はオール5で試験もほぼ満点という生徒しか合格しませんでした」だとか。

 進学成績が良くなった原因のひとつに、未公開だった進学実績を公開したことがあるそうです。元々優秀な生徒が集まっているはずなのに、進学成績が悪かったらそれは先生の指導に問題があるということになります。進学実績だけが全てではないとは言え、やはり指導する先生たちにはプレッシャーがかかりますから、それだけで10%くらいはアップすることでしょう。実際、今年も東大・京大ともに合格者数は県内1位だったようですし。

 しかも、この春に入った優秀な生徒たちが受験する3年後にはますます進学成績が上がることになるでしょうから、少なくとも進学という面では実績を公開したことの成果は早速現れたと評価しても良いのでしょう。ただ僕は前校長の「マスコミの商業主義に乗らない」という理想主義も「全人教育」を掲げるうちの高校らしいなぁと感心していただけに、この話はちょっと複雑な気分でもあります。非公開が理想主義なのか、それとも単なる「逃げ」なのかも判断しづらいですし。

 

とりあえず、読むたびに(1日1回)

を押してください。 日記才人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。