幹事クリタのコーカイ日誌2007

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2月21日 ● 名古屋における松坂屋ブランド。

 大丸と松坂屋HDが経営統合を検討しているというニュースで、両社の株価が高騰しているそうです。そんな話、教えてくれたら僕も松坂屋の株を買っておいたのに、ということはともかく、両社の統合は市場にとっては期待をもって迎えられる話なようですから、とりあえず前向きに進んでいくことでしょう。

 ただ名古屋の人間にとっては少々胸中複雑なものがあります。大丸と松坂屋では大丸の方が上位にありますから、経営統合とは言っても対等ではなく大丸に松坂屋が呑み込まれることになりそうです。『華麗なる一族』の万表大介が「小が大を呑み込む」合併のために息子の会社すら潰してでも策を弄しているように、合併に伴う悲劇は常に小さい側にあります。

 松坂屋は全国的に見れば大手百貨店の中では下位に属する単なる地方の老舗デパートかも知れませんが、名古屋人にとっては「豪華」「贅沢」のシンボルのような存在です。贈答品はよそから来た高島屋でも三越でもなく「松坂屋だがね」と言うのが名古屋人の鉄則です。松坂屋の包装紙であれば中身を問わないとすら言われています。

 それほど名古屋ではブランド力を持つ松坂屋が大丸に呑み込まれてしまうというのは、名古屋の人間にとっては決して嬉しい話ではありません。バブル時代にロックフェラービルを日本人に買われてしまったニューヨーカーたちよりも寂しい心境なのです。

 すでに名古屋人のもうひとつの誇り(?)だった東海銀行は今では東京三菱UFJ銀行になってしまい影も形もありません。「東京」にも「三菱」にも親しめない名古屋人にとって、もはやかつての東海銀行とは別物であり、東京から進出してきた「よそ者」でしかありません。排他的と言われる名古屋人ですから、「よそ者」にはかなり厳しい目を向けています。もちろんそれは裏返せば昔馴染みの人間に対しては情が濃く家族的で温かいということでもあるんですけどね。

 他地域から見たら「名古屋にはトヨタ自動車があるじゃん」と思われるかも知れませんが、トヨタはあくまでも豊田(=三河)の企業であって、名古屋経済を支えてきたのはかつて「五摂家」と呼ばれていた「中部電力」「東邦ガス」「名古屋鉄道」「松坂屋」「東海銀行」なのです。東海銀行に続き「松坂屋よ、お前もか」と慨嘆している名古屋人の寂しさは他地域の人にはきっと理解されないことでしょう。

 もっとも名鉄も経営はいかにも苦しそうだし、東邦ガスも最近のガス器具の事故やら電気とのエネルギー競合での苦戦ぶりからすると大変そう。結局五摂家で健在なのは中部電力だけ。ただ最近は前述のトヨタと、東海道新幹線を持つJR東海(名古屋が本社)という2社が名古屋財界での重みを増してきているので、これを「新御三家」と呼ぶ向きもあるようです。

 その証拠に新たに蒲郡に開校した中高一貫の進学校「海陽学園」は、この3社が設立したものです。まあ金を持っている企業が作った割には、学費が高いことでも有名になったのはちょっと、という気はしますが、ともあれ松坂屋の件は名古屋の経済界の要が移りつつあることの象徴なのかも知れません。


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