幹事クリタのコーカイ日誌2006

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7月14日 ● ジダンと言葉の行き違い。

 ジダンの頭突き退場事件はニュースを見ているとまるでテポドン並みの大騒ぎです。たかが一サッカー選手が退場したことと、国連で超大国が揉めている国際的大事件が同列に扱われていることにかなりの違和感を感じつつも、ジダン関連のニュースは確かにいろいろな観点で興味を惹くことも間違いありません。

 人によってはスポーツと暴力と子どもへの影響について考えることでしょうし、人によっては移民への差別問題について思いをはせることでしょう。そんな大きなテーマではなく、サッカー界の今後のことを思う人もいると思います。

 僕はジダンと彼に暴言を吐いたイタリアのマテラッツィの意見のすれ違いぶりに興味がわきます。ジダンははっきりと暴言内容について語りませんでしたが「母と姉を侮辱された」ことを概ね認めているのに対し、マテラッツィは「母親を侮辱していない」と語り、ジダンに「そんなにシャツが欲しければ試合後にくれてやるよ」と見下されて腹が立ったから暴言を吐いたと答えています。ジダンはシャツ発言については認めたものの「見下してはいない」と語っています。

 お互いの証言に嘘偽りがないとしたら、大筋では(1)マテラッツィが守備のためにジダンのシャツをつかんだ(2)ジダンが「後でシャツをやる」発言(3)それに怒ったマテラッツィが暴言を繰り返し(4)怒ったジダンが頭突き という流れになります。

 ジダンにしてみれば「シャツをやる」発言はマテラッツィの執拗な守備に対する軽口で、それなのに侮蔑的な許せない発言を繰り返すからカッとなったわけで、暴力はいけないとわかっていても自分と家族の誇りを守った、ということになります。恐らくジダンは引退試合でもあり、かなりナーバスになっていたと思います。

 逆にマテラッツィにしてみれば、いくらジダンがスーパースターだとしても自分を見下すような発言をしたのだからいつものようにお返しに悪口を言い返しただけで、そんなに特別酷いことを言ったつもりはないのでしょう。なのにジダンが短気を起こして頭突きをしてきたんだ、と思っています。オレが悪者かよ、オレは被害者だぜ、と憤慨しているかも知れません。

 つまりこれはお互いの発言を悪意にとってカッとなってより悪意を倍返しした挙げ句の悲劇です。人と人とがぶつかり合う時の、ある意味典型的な悪循環であり、こんなことはジダンならずとも我々の間でも日常的に起こりうることです。

 特に最近感じるのはメールのやり取りから悪循環に陥るパターンです。メールは事実の伝達や確認にはとても便利なツールですが、微妙な感情の綾を伝えるには表現力不足のメディアです。だからこちらは決して悪意があって書いたわけではない、本当になんでもない一言が、相手は妙にそこに引っかかってちょっと棘のある言い方の返事を送ってきて、それを読んで逆に悪意がなかっただけにこちらも余計に腹が立って今度は本気で喧嘩腰になる、というまさに「ジダン頭突きスパイラル」に簡単に陥ってしまいます。

 僕自身、過去に何度もそういう目にあってきたので、最近ではこみ入った話はなるべくメールよりも電話、電話よりも会って話すことにしています。お互いに決して悪意があったわけでもないのに、なぜか喧嘩して仲直りできないのはバカバカしいしくだらないことです。相手のことを大事に思っていればいるほど、つまらない言葉の行き違いで関係にヒビが入るのは避けたいと思います。

 W杯決勝に出られなくても、誰だって日常の中でジダンとマテラッツィになる可能性があります。と言うか、喧嘩のほとんどはこのパターンじゃないかと思うくらいです。全ての人に対して誤解されないというのは無理だとしても、大事な人に対してはやはり言葉を選んでちゃんと話をすることですし、また大事に思っている人からカチンとくることを言われたと思ったら、立ち止まって相手の真意をよく考えた方がいいです。


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