幹事クリタのコーカイ日誌2006

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4月27日 ● 大学合格者数ランキングという「報道」。

 僕が最初に一般週刊誌を買ったのは高校生の時でした。「週刊朝日」と「サンデー毎日」を高校1年の3月下旬に通学途中の駅ビルの本屋で買ったのを今でも覚えています。高校生なんて「POPEYE」とか「週刊プレーボーイ」とか「GORO」(←懐かしいでしょ?篠山紀信の激写ですよ!)を愛読するものなんですが、この時は「東大合格者ランキング」を読みたくて買ったのです。もちろん自分の学校の順位も気になるし、先輩の名前が載っていることもあったので。

 それから幾星霜。とっくの昔に大学は合格者を公表しなくなり、高校も合格者数を敢えて発表しなくなりましたが、未だに新聞社系週刊誌は大学合格者数ランキングを血眼になって作成しています。それも最近はかつてより熱心になっていて、2月に関西の私大の合格発表が始まった頃からこの4月末まで、ずっと手を変え品を変えて各種の高校別ランキングを載せ続けているのです。

 大手新聞は本紙では学歴信仰を批判しているくせに、その一方で自社の週刊誌でこうして東大を頂点とした学歴ヒエラルキーを強固にしているわけで、見事なまでの自己矛盾、もしくはマッチポンプ状態です。いまどき東大出ていたからって仕事で大して役に立たないボンクラが多いことはみんな知っているわけですし、正直大半の読者にとって東大合格者数の高校別ランキング1位が開成であろうが灘であろうが、どうでもいいことです。それほどまでにページを割くようなニーズがあるとは思えません。

 社会的にも有害な上に読者のニーズもそれほど高いとは思えないのに、週刊誌がこれほどまでに大々的な扱いでずっと高校別の大学合格者数ランキングを掲載し続けるのは、実は広告狙いだからです。ちょっと考えればわかります。受験産業も今は少子化の煽りを受けてどこも経営が苦しくなってきています。この先、大学全入時代なんてものがきちゃった日には、河合塾も代々木ゼミナールも用無しになりかねません。

 そこで、どんな大学でも入れればいいというわけではない、東大とか医学部とか、とにかく難関と呼ばれる大学に入らないと「格差社会」では生き残っていけないんだ、ということをアジテーションしなくてはならないのです。学歴社会がなくなって一番困るのは予備校や塾ですからね。

 新聞社系週刊誌にも自分たちの事情があります。そもそも活字離れが叫ばれる昨今、週刊誌全体に売り上げは落ちてきています。その中でも特に新聞社系は昔から「ぬるい」記事が多く部数が落ちても尖鋭化できないので軒並み苦戦しています。部数が落ちれば広告費も稼げません。そこで昔から得意な(新聞社だけに全国にネットワークがありますから)大学合格者数ランキングを拡充して、そこに受験産業の思惑にぴったりはまるような記事を載せ、広告を出稿してもらおうという魂胆です。つまり大学合格者数ランキングというのは「ニュース」でも「娯楽」でもなく、受験産業の「広告」の片棒を担いでいるだけ。弱者の生き残り共同大作戦だったのです。

 しかし、こんなニーズのない記事を載せ続けているものだから、ますます読者が離れていってしまうことに彼らは気づいているんでしょうか?広告収入さえ入ってくれば販売収入は要らないとでも思っているんなら別ですけど、そうじゃなければこんな「報道」の自殺行為は早々にやめた方がいいんじゃないかと思いますけどね。もっとも、こうした広告のカタチをしていない広告は実は秘かにテレビでも広がりつつありますから、今後はますます境目が曖昧になっていくのがこれからのメディアのカタチなのかも知れません。


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