ＷＢＣの陰で目立っていませんでしたが、大相撲春場所で１１日目にモンゴル勢同士の全勝対決がありました。横綱朝青龍と関脇白鵬。熱戦の果てに白鵬が上手出し投げで朝青龍を下して全勝を守るとともに、来場所の大関をほぼ手中にしました。

　白鵬はまだ入幕する前から将来の大器として期待されてきた力士です。大関昇進こそ琴欧州に先を越されてしまいましたが、それが刺激になったのか最近の土俵の充実ぶりは素晴らしいものがあります。今場所などすでに大関を通り越して「横綱相撲」と呼ぶに相応しいような盤石の取り口です。

　この調子なら大関など３場所くらいで通過して、すぐに横綱に昇進しかねません。残念ながら日本人力士で立ち向かえそうな相手はおらず、敵は朝青龍と琴欧州くらいでしょう。しかし稽古不足と慢心の朝青龍と故障をしている琴欧州では、今の白鵬の相手ではありません。しかもこの３人の中で一番若いのに品格があり「お相撲さん」らしいのですから、まさに言うことなし。朝青龍に代わって白鵬が主役の時代がすぐに来るかも知れません。

　相撲界にとってはもちろんこれは喜ぶべきことです。朝青龍の独走は相撲人気を低迷させるだけでしたが、琴欧州の登場とそれに続く白鵬の成長で、しばらくは「３強時代」になりそうです。たとえ外国人だとしても、やはり場所を盛り上げるには強い力士が鎬を削ってこそ。しかも３人が３人とも個性的な魅力があるのですから理想的なライバル関係になると思います。

　ところでそんな陰で魁皇が栃東に勝ってカド番脱出と引退回避のための奮闘を続けています。いま５勝６敗で残る４日間の相手には話題の３強も含まれます。正直勝ち越しは至難だと思われますが、若貴兄弟や曙と同期のベテラン魁皇の最後の相撲にも目が離せません。