幹事クリタのコーカイ日誌2006

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1月15日 ● 坊ちゃん文学賞。

 松山市が主催する「坊ちゃん文学賞」というものがあります。1989年の市制100周年を機に創設されたもので、隔年で行われる文学賞。青春小説がテーマです。先日テレビドラマ化された敷村良子『がんばっていきまっしょい』が代表的な受賞作。

 僕は見た目は怪しいオヤジですが、実は青春小説というのが密かな(?)好物でして、今回ダ・カーポに掲載された大賞受賞作大沼紀子『ゆくとし くるとし』も早速読んでみました。

 ところがこの短編小説、今までとかなり味わいが違います。なにせ冒頭から「一年ぶりに実家に帰ると、オカマがいた。」ですから。東京の大学に通う娘が年末に実家に戻ってきたところから始まるタイトル通りの「ゆくとしくるとし」な物語なのですが、この冒頭の一文からどんどん小説世界に引き込まれていきます。

 主人公の大学生の娘はニートです。大学の単位を落とし進級が危ない、しかもその理由が特にない、ただ怠惰にしているだけの学生。まさにこの時代を象徴しているような主人公。当然、単なる青春賛歌の小説にはならず、むしろ青春なんてそんなにいいものか?という懐疑心を含んだ小説に仕上がっています。

 まだ30才だという作者はベテラン作家のように文章のリズムが良く手馴れているので、一気に最後まで読みきることができました。青春小説というよりはむしろ家族小説というジャンルに含まれるような気がしますが、とにかく「いま」を感じさせ、しかも「いま」の先にあるものを見据えている作品です。今後も続々と生まれてくるであろう「ニートな青春」文学。こうした作品のレベルもどんどん上がっていきそうです。 


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