幹事クリタのコーカイ日誌2005

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11月20日 ● レクサス&レオン。

 かつてトヨタ自動車のクラウンの広告コピーに「いつかはクラウン」というものがありました。広告史に残る名コピー、というよりも、むしろ日本の高度経済成長時代を物語る名コピーです。

 昭和30年代に始まった高度経済成長は、自家用車なんて夢のまた夢、と思っていた庶民が豊かになっていくサクセスストーリーでした。最初はパブリカから始まってカローラ、コロナと順番に大きなクルマに買い替えていき、最後はクラウンを所有する。それが成功の証であり、また自動車会社もそういうストーリーを作ることで、ユーザーの消費意欲を維持させて儲けてきたのです。

 ところがバブル崩壊から平成不況を経て、すっかり世の中はそういうサクセスストーリーを手放してしまいました。デフレ時代になって安くてもそこそこの品質のものが手に入るようになりました。贅沢を言わなければ、森永卓郎ではないですが、年収300万円でも楽しく暮らしていけるのです。

 働く意欲も消費する意欲もない人たちが「下流社会」を作るそうですが、多くの若者からしてみれば、ユニクロを着て発泡酒片手に「お笑い芸人」をテレビで見て笑っていられればそれで十分幸せでしょう。高度成長時代を引きずり、あくせく働いてリストラに怯えうつ病になって挙句に自殺する中高年は、決して彼らのライフスタイルのモデルにはなり得ないのです。

 こんな時代に「いつかはクラウン」はもはやビジネスとして成立しません。デフレでモノの単価が下がり利益率が低くなったために、企業はもっと儲かる高額商品を一部の金持ちに売りつけることで利益を確保しなければいけません。だからトヨタはレクサスを立ち上げて、ヒルズ族のような一部の富裕層を相手に商売をすることにしました。高級ブランドの服を着て高価なワインを飲み海外旅行を楽しむ。彼らは「はじめからレクサス」な人たちです。

 「LEON」のような雑誌が売れるのも、単にオヤジたちが「ちょいモテ」になりたいからだけではなく、貧乏な人が無理してちょっと高いものを買う時代が終わり、ごく一部の金持ちがこれまで以上に高額な商品を欲しがる時代に変わったからです。ドルガバの服やフランクミュラーの時計なんて普通の人から見たら馬鹿げたような価格がついていますが、そのくらい高額にしないと買う側にしたら差がつかないし、売る側にしたら儲けが薄いのです。

 レクサスとレオンという2つの「L」の成功譚は、デフレとか下流社会といった「下」へ向かうベクトルが生んだ反動です。バブル期は全ての人たちが「上」を目指しましたが、今回は上へ1割、下へ9割と分離していきそうです。僕の場合はどちらにもいけず相変わらず真ん中あたりでウロウロしてしまいそうですが。


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