幹事クリタのコーカイ日誌2005

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11月4日 ● 「今日の部長、頭下げすぎでした」。

 トヨタマークXというクルマがあります。かつて大ヒットした「マークII」の後継車。しかし今やファミリーカーはすっかりミニバンに市場を奪われてしまい、このサイズのFRセダンはなかなか売れません。そこでトヨタは名前を変えるとともにイメージも変えて、よりアグレッシブな大人のスポーツセダンという位置づけにしてきたわけです。わかりやすく言えば、「プアマンズBMW」狙いです。

 と言っても、トヨタはこの夏にレクサスブランドを立ち上げました。ここに投入したレクサスISが完全にBMWの3シリーズとぶつかっていますので、マークXは少しポジションを変える必要が出てきたのだろうと思います。すなわち、大人の男の遊び心溢れるセダン、これまたわかりやすく言うとLEON的な「ちょい悪オヤジ」仕様です。

 そんなオリエンテーションがトヨタからあったのかなかったのか、新しいマークXのCMはなかなかユニークなものに仕上がりました。マークXのドライバーズシートには「男盛り」佐藤浩市。助手席には妙齢の美女。彼女が「今日の部長、頭下げすぎでした」といきなり言い放ちます。「ん?」という顔の佐藤。しかし次に彼女は「でも素敵でした☆」と一言、「ふふん♪」という顔の佐藤。走り去るマークX。この後二人はどうなるの!?うーん、背中が痒い!

 これをマジでやっているんだから凄いです。きっと広告代理店がトヨタに提出した企画書にはもっともらしいことが書いてあったと思います。中年男性の志向が変わってきていて、遊び心溢れる大人の男性はミニバンに飽き足らず走りと高品質のセダンを求めています、なんて。しかし高級輸入車は巷に溢れていて差別化できないし、クルマに対する信頼感も大切にしたい、またクルマが派手過ぎるとかえってイメージが悪いと思っているビジネスマンこそ、新しいマークXのターゲットです、なんて。そして、そんな男性たちのライフスタイルをわかりやすく切り取って提示したCMを作りましょう、なんて。そんなことを何十ページもある分厚い企画書に真面目にまとめあげて、もっともらしいプレゼンをした結果がこのLEONチックな「ちょい悪オヤジ」CMです。

 要は部下のカワイイあの子と不倫したいとオヤジたちはみんな思っているし、そのために高級ブランドの服も高い時計も何とか頑張って買っている、でもクルマはBMWやアウディやアルファロメオやジャガーは困るんだよな、高過ぎるし奥さんや近所の目も気になるから、だけどミニバンじゃ不倫ドライブ旅行に彼女を誘えないじゃん、そこでお手頃な価格と奥さんに言い訳できるマークXはいかがですか、ということです。

 しかし、僕が思うにこのCMはターゲットに対して逆効果じゃないかと思うんですよね。だってジャガーじゃ不倫したい気分バリバリだと思われるからマークXでごまかすわけでしょ?ところがこんな「不倫仕様」みたいなCMを流されてしまったら、その気がある男性はもちろん、その気がない真面目な人まで買いにくくなってしまいます。これじゃあ「遊び心」ではなく「下心」が溢れまくっていますから。このCMをリビングで見ながら「マークXが良いなぁ」なんて奥さんに言えませんよ。険悪になること間違いなしです。

 だからと言って奥さんと一緒に買い物に出かけるような「愛妻仕様」のCMを流してしまったら、今度は相手の女性から「そんなダサいクルマじゃイヤ」って言われてしまいますからね、どっちにしても難しいところです。まず広告代理店に頼んで「不倫相手に乗って欲しいクルマ」ランキングでも調べてみてはいかがでしょうか、トヨタさん?


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