幹事クリタのコーカイ日誌2005

[ 前日翌日最新今月 ]


 
8月4日 ● ドラマの質と視聴率。

 雑誌『ザテレビジョン』が3ヶ月ごとに「ドラマアカデミー賞」という賞を連続ドラマに対して行っています。世間的な注目度がいかばかりかはわかりませんが、個人的には毎回注目している企画です。選考は審査員、TV記者、読者投票の3つを基準にして行っているのですが、大抵審査員と記者は傾向が一致するのに、読者はアイドル、特にジャニーズタレントのドラマに偏りがちです。

 今回は作品賞をはじめ主演男優賞、助演男優賞など7部門を『タイガー&ドラゴン』が獲得しました。審査員の評を読んでも「この作品につきる」とという高い評価です。僕も前のクールで見ていた数本のドラマの中で傑作と呼べるのはこの『タイガー&ドラゴン』だけだったと思いますし、そのクオリティの高さは近年のドラマの中でも出色だったと思います。

 ただそれだけ素晴らしい作品だと認められているのに、このドラマアカデミー賞の読者票では、この作品、実は4位なのです。上には『エンジン』、『恋におちたら・僕の成功の秘密』、『anego・アネゴ』が並んでいます。

 魔邪ではありませんが「はぁ?」と言いたくなります。どう考えたってドラマの出来では勝負になりません。脚本も演出も音楽も俳優も全然レベル違いなのですから。しかし平均視聴率で見ても『タイガー&ドラゴン』は12.9%。『エンジン』の22.5%はもちろん、『anego・アネゴ』15.7%、『恋におちたら・僕の成功の秘密』16.3%にも大きく引き離されているのです。

 これが「ポピュラー」であることの難しさです。ドラマだけではなく映画だろうが音楽だろうが小説だろうが、一般に幅広く受け入れられる「商品」と、先端的なマニアに熱狂的に受け入れられる「クリエイティブ」の差です。

 『タイガー&ドラゴン』は落語ブームまで巻き起こすほどのパワーを持ったドラマでしたが、結局それも一部の「好き者」の間だけのこと。長瀬&岡田がいくらジャニーズの人気タレントと言っても、木村、草なぎのSMAP勢に比べれば人気の幅広さが全然違うのでしょう。

 このドラマが放送されている途中にも何人かから感想を聞きましたが「難しくてよくわからない」という人が多かったようです。なじみの薄い古典落語をベースにしているし、いきなり現代劇と時代劇が切り替わるし、ひねりや楽屋落ちも多いし、登場人物の造形も複雑で、ただぼんやりとドラマを「眺めている」ことに慣れてしまった視聴者には頭を使わせすぎるドラマだったのでしょう。映画や演劇と違って、テレビドラマはもっと薄味で素直に作らないと視聴率は取れないということなのだと思います。

 ただこのドラマを作ったTBSの磯山晶プロデューサー(一連のクドカンドラマのP)は「視聴率が取れない」(けれど質は高い)ドラマを作るということですでに局内のコンセンサスを得ている雰囲気なので、ぜひこのままマニアックなドラマ作りを続けてくれると期待していますけどね。

 そしてもうひとつ大事なことは逆に『エンジン』のようなベタで素直なドラマも決してバカにしてはいけないということ。ポピュラーであることを否定したら、文化の裾野が広がりませんから。このバランスの取り方が難しいところです。


とりあえず、読むたびに(1日1回)

を押してください。 日記才人という人気ランキングに投票されます。
初めての方は、初回のみ投票者登録画面に飛びます。
結構更新の励みにしていますので、押していってくださると嬉しいです。