Ｍっちゃんは最近すっかりボケてきています。もちろん、元々かなりボケた人間ではありました。よく僕が「Ｍっちゃん、目がまた死んでいるよ」と注意するんですが、しばしば興味のない話題の時に死んだ魚のような生気のないドロンとした目をしていることがあります。合コンの時だけ、この目がキラキラと輝いて曇ったガラス玉がダイヤモンドのように変わるのですが、最近では本人も自覚しているくらいに恒常的にボケているようで、仕事も全くはかどらないとのこと。まだ44才、本来ならもちろんボケボケしていられる年齢ではありません。

　で、自覚症状があって自らの衰えに焦りを覚えたＭっちゃんは、本屋で「頭が良くなる術」的な書物を何冊も立ち読みしたらしいのです。で、その結果、Ｍっちゃん曰く「クリタさんのような生活がボケないでいられる生活なんだよ」との結論を得たようです。

　つまり、幹事のようないろいろな人と会って面倒な調整作業をすることが、気も遣い頭も使うので一番刺激になって良いということだそうです。その上、この「コーカイ日誌」を更新するように毎日文章を書いたり、テニスのようなスポーツをしたりしていればいつまでもボケないで、脳の機能を維持できるんだとか。

　まあそれは今さらＭっちゃんに言われなくてもそうだろうと思いますが、Ｍっちゃん的に心に残ったのは、「知らない人と新しい出会いをするとボケない」ということだったようです。つまり、Ｍっちゃんがボケてきてしまったのは、合コンも出会い系もやらなくなって、レギュラーの愛人の女性たちとマンネリな逢瀬を重ねているだけだからだ、と考えたようなのです。

　確かに新しい女性と出会って口説くという行為は、実に刺激と創造性に満ちあふれています。気と頭（とお金）をフルに使って臨まなければ、我々のようなしがない中年男は女性に相手にもされないことでしょう。

　かつてＭっちゃんは、常に戦場にあるような真剣勝負の心持ちで、合コンや出会いサイトに臨んでいました。多分頭脳の90％は女性を口説くことに使っていたはずです。しかし、それをやめてしまった今、残る10％しかＭっちゃんの脳は使われていないのですから、そりゃボケもすることでしょう。ただでさえ物忘れの激しくなる年頃なのに、それに輪をかけてしまったようです。

　このまま着々と「痴呆中年」になってしまうことに恐れを抱いたＭっちゃんは、とりあえずボケ防止のために出会いサイトに再出撃しようかと考えているようです。ボケないために出会いサイトで女を口説くという倒錯した人間は日本中でもＭっちゃんただ一人かも知れません。もしこのサイトを読んでいる女性で、出会いサイトでＭっちゃんらしき人物に遭遇したら、可哀想なボケ中年なので、優しくしてやってくださいね。