幹事クリタのコーカイ日誌2004

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2月29日 ● それは槇原敬之の陰謀〜後編〜。

 昨日の前編を読んでいない人は、まずそちらをお読みください。

 さて、昨日はどうして現代女性は「ナンバー1よりオンリー1」になりたいと思っているのか、という話を途中までしました。「オンリー1」でなければならない必要はないはずなのに、みんなそう信じているのはなぜでしょうか。

 ここで考えるのは男女間の婚姻の形態の歴史的変化です。と言っても、僕は学者ではないので、完璧な歴史的・社会学的検証はできません。聞きかじりの知識を元に考えていきますから、もし専門家が読んでいてもあまり厳密な突っ込みを入れないようにお願いします。

 さて、「一夫一婦」制が完全に定着したのは近代になってからだそうです。もちろん、中世・近世でも基本は一夫一婦だったわけですが、それ以外、すなわち婚姻外の男女関係は洋の東西を問わずかなり大っぴらに認められていましたし、さらに言えば日本において奥さん公認の「妾」の存在はつい最近まで続いていたのです。

 源氏物語や、また中世・近世の大名などの例を取り上げるまでもなく、昔は事実上の「一夫多妻」制が広く用いられていたのです。そんな偉い人だけではなく、江戸期までの日本では、男と女はもっと自由に素直にくっついたり離れたりしていたらしく、ひとりの相手と生涯添い遂げる、という「オンリーワン・フォーエバー」思想は、明治になって西洋から輸入された考え方だそうです。

 その西洋でも「一夫一婦」制がきちんと運用されるのは近代以降。そしてイスラム世界では未だに「一夫多妻」制が存在します。つまり、本来人間は野放しにしておくと、一人の男に多数の女が集中する形態をとってしまいがちなのです。経済力のある魅力的な男がたくさんの女を囲う。サル山のサルと同じです。むしろそれが自然なのです。

 ところが近代化すると、どの社会でも一夫一婦制を導入していきます。今やイスラム社会でも一夫多妻は少数派だとか。なぜならそれが一番社会を維持していくのに生産的・効率的だからです。どういうことか?男女が分業して男が働きやすい環境を作っていけるからです。

 一人の男に女が集中するということは、あぶれる男が大量に生まれるということです。「モテナイくん」です。彼らは自分で家事をしなくてはならないし、性欲を満たすために娼婦を買う必要も生じます。仕事に集中できる環境ではありません。一夫一婦制というのは、一人の男に必ず家政婦と娼婦の役割を兼ねた女が寄り添い、さらに子どもができればその女性は乳母も兼ねます。男と女が分業することによって、社会の生産効率が上がるのが一夫一婦制なのです。

 しかし、そうは言っても女性は一部のすぐれた男性に集中し、多くの「モテナイ」くんに見向きもしません。そこで「オンリーワン・フォーエバー」思想を刷り込んで、一夫一婦制キャンペーンを長年繰り広げてきたわけです。どんなに優れた男でも、一人の女性を選んだら他の女と付き合ってはいけない。「女性独占禁止法」です。こう決めることで、本来ならあぶれるはずの男にも女性が回ってくるようになりました。近代化を進める明治政府が、そして戦後アメリカが繰り広げたキャンペーンが実を結び、女が男をフォローすることで、男は仕事に精を出し、日本経済は飛躍的に発展しました。浮気する男は最低、これは政府が思想的に女性たちに刷り込んだだけなのです。教育の成果です。

 ところが「不倫は文化」と言い放った石田純一のように、平成に入ってからの日本社会は、かつての平安王朝のように、またそのタガがかなり緩んできていています。既婚者だけではなく、Kちゃんのような独身者も、次々と別の異性とくっついたり離れたり。折角定着し始めた「オンリーワン・フォーエバー」思想が崩壊しつつあります。結婚までになるべくたくさんの異性と付き合いたいと思う独身者、そして結婚しても恋愛はしていたいと考える既婚者。それはある意味、経済のために縛られた男女関係の解放でもあるのですから、あながち人間として間違っているとも言い切れないのです。

 しかし、その「性の解放」と日本経済の落ち込みはシンクロしてしまいました。男たちが元気を失ってしまったのです。そこで再び「モテナイ」男の元に女性たちが戻ってくるような思想的アジテーションが求められました。それが『世界にひとつだけの花』だったのです。そのルックス的不自由さでは芸能界でも群を抜く槇原敬之が、「モテナイくん」たちのために立ち上がったのです。敢えてモテル男ナンバー1のキムタクに、「ナンバー1よりもオンリー1」と歌わせることで、女性たちはまた洗脳されてしまいました。「オンリーワン・フォーエバー」思想の復権です。日本のGDPは途端に7%の成長率を示しました。槇原敬之の陰謀は見事に成功をおさめたのです。

 えっと、二日間使ってそんなヨタ話かい、と思われた方、ごめんなさい。確かに最後の方はかなり「トンデモ」論になってしまいました。でも「浮気はなぜいけないのか」と思っている人も多いみたいなので、それは「誰かが傷つくから」という理由ではなく(恋愛はどうせ誰かが傷つくのです)、「モテナイくんが困るから」というのが本当の理由であることを知っておいてもらいたかったのです。日本経済のために、みんな不倫はやめましょう。


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