Ｍっちゃんは損することに敏感です。かつてパソコンを買った直後に、その機種がモデルチェンジしたため、売価がいきなり3万円下がった時は、怒り狂って販売店に差損分を補填するためにデジカメをつけろ、などと無理難題のクレームをつけたりしました。

　ところが基本的に物事に対しておおざっぱで無頓着なので、損をしたとわかった時はそうやって怒るものの、気づかなければ「無問題」でスルーしています。

　一番最たるものが「お釣り」。お店でお釣りをもらう時に、誰でもその額が合っているかどうかチェックしますよね？ジャラジャラと小銭をもらった時は面倒に思って確かめずに受け取ってしまうこともありますが、少なくとも紙幣の種類と枚数くらいは確認するものです。

　ところがＭっちゃんは生まれてこのかた、一度たりともお釣りを確かめたことがないんだそうです。必ず合っていると思っていたみたいです。しかし、お釣りの額が間違っていた経験は誰しもあると思います。特にかつて聖徳太子がどーんと存在した頃、5000円札と1万円札を間違われてお釣りを渡された経験が中年以上にはきっとあることでしょう。最近では二千円札も間違いの元だそうです。

　Ｍっちゃんはその話を聞いて「えっ、そうするとみんな得しているの、損しているの？」と言うから、だから確認しているから少なくとも損はしていないんだってば。得した時にそのまま黙って受け取ってしまうか申告するかはその人の人間性だけどね。

　Ｍっちゃんは急に自分がこれまで得してきたのか損してきたのかが気になり始めたようです。「ねえ、どっちが多かった？」と言うので、どっちもどっちだよなぁ、と答えておきました。僕の覚えている限りでは余計にお釣りを貰ったことの方が多かったと思いますがそれは人それぞれでしょうし。

　きっと運と勘だけは良いＭっちゃんのことですから、確認しなくとも多分得しているんじゃないかと思います。心がけがひどく悪い癖に人生トータルで得するなんて、何となく許せませんが。