巨人の入来祐作投手が日本ハムの井出竜也外野手と交換トレードされました。巨人がベテラン右腕を放出して中堅外野手を獲得する意味はあまりありません。巨人の外野は高橋由、ローズ、ペタジーニと最強のトリオが揃っていて、さらに他球団にいけばレギュラー確実な清水も斉藤もいるのですから、井出の出番があるとはあまり思えません。強いて言えば足が速くて守備が良い選手ですから、ローズやペタジーニを交代させた時の守備固めで使うくらいですが、貴重な中継ぎ右腕を放出してまで獲得する選手かどうか疑問が残ります。

　このトレードは、多分入来側が言っているように、代理人交渉を主張した入来に対するペナルティであり、他の巨人選手に対する見せしめでしょう。プロ野球機構がきちんと認めている代理人による契約交渉を、巨人だけは渡辺オーナーの意向により認めていません。もちろんこれは重大なルール違反なのですが、それをゴリ押しするのがナベツネです。

　先に上原が代理人を立てて交渉をした時も、巨人球団側は、「手続き上の瑕疵があった」と言いがかりをつけて、代理人ではなく単なるオブザーバーだったと主張。後に撤回しています。大エース上原ですらこの扱いですから、入来クラスが代理人だなどと言おうものなら、ナベツネが「放り出せ」と言うのは容易に想像ができます。

　明らかに協約違反なナベツネのこの態度を、プロ野球機構は黙認しています。ナベツネの横暴な振る舞いは、ご存知のようにもちろんこれにとどまりません。それを全てを黙認してしまうのは、それだけナベツネが今の日本プロ野球界で権力を握っているからです。本来ならコミッショナーがきちんと釘を刺すべきですが、彼はナベツネの傀儡ですし、また他の11球団のオーナーがきちんとナベツネに対してモノを言えれば良いのですが、どちらかと言えば小久保を無償で差し出したダイエーのように、ナベツネに媚びへつらってばかりです。

　なぜか。それはナベツネが気に入らないことがあればすぐに「脱退する」と脅しをかけるからです。巨人は新しいリーグを創設するぞ、オレの気に入った球団だけ一緒に新リーグに加えてやるぞ、と脅しをかけるから、他球団のオーナーは戦々恐々としてしまい、ナベツネに睨まれないように唯々諾々と従うことになってしまいます。巨人の人気に彼らは頭を下げているのです。

　つまり、ナベツネにそれだけの強大な権力を与え、横暴な振る舞いを許し、日本プロ野球をガタガタにしつつあるのは、それでも巨人を支持する膨大なファンたちのせいだということになります。小泉がイラクへ派兵するのは国民が総選挙で彼を支持したから。それと同じように、ナベツネがなにをしようが、巨人ファンが減らない限りは、彼はアンタッチャブルな存在なままです。

　僕は小学生の頃から高校生まで巨人ファンでした。名古屋にいると中日が「ミニ巨人」化するので、アンチ中日という気持ちから巨人を応援していました。しかし、江川事件と長嶋解任の二大ショックで、すっかり巨人ファンをやめてしまいました。理性的に考えて、巨人を応援する理由が見つからなかったのです。

　巨人はその後も順調にファンを減らし続けてはいると思います。テレビの視聴率も巨人戦では取れなくなってきました。しかし、それでもまだ足りません。ナベツネの恫喝が有効な限り、巨人支配から日本球界は逃れられません。落ち込むばかりの日本プロ野球を救うには、まずナベツネに「ノー」とファンが言わなくてはならないのです。でなければ、巨人ファンのせいで日本プロ野球は潰れてしまうことでしょう。