幹事クリタのコーカイ日誌2003

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11月20日 ● 「今だけ」を生きる男。

 先日の飲み会でのMっちゃんの話。彼はいまフリーランスのコピーライターという極めて不安定な位置に立っています。レギュラーできちんとお金がもらえる仕事も数少なく、収入はその時々で大きく変化しますが、基本的には決して多いとは言えないはずです。フリーランスと言うよりも、フリーターに近いかも知れません。

 Mっちゃんがそれでも食べていけるのは、子どもがいない、奥さんが働いている、親の家に同居していて家賃も光熱費も食費も払っていないパラサイト状態だからです。俗に「男の三大不良債権」などと揶揄される「専業主婦」「子ども」「住宅ローン」のひとつとして抱えていないのですから、Mっちゃんは極楽とんぼを決め込んでいられるわけです。

 しかし、貯金もせずに稼いだ分だけ遊びに使うという生き方をずっと40数年間してきて、両親も結構な年だし、子どももいないし、果たしてこの先どうするつもりなのか、僕らから見ていても不安だったので、Mっちゃんに自分の人生は百点満点で一体何点だと思っているのか聞いてみました。僕なら、今の彼の何ら頼るべきモノもない先行き不安ばかりな人生は「20点」くらいかと思っていたのですが、Mっちゃんは「うーん、80点かな」と言うのでビックリしてしまいました。

 定収入もなく、子どももいない、老いた両親を抱え、奥さんとは愛情もない、それでどうして80点などという高得点が叩き出せるのか不思議でなりません。「だってさ、とりあえず好きなことをやって暮らしているし、今の日本で飢え死にするなんてことはまずあり得ないでしょ。贅沢言わなければ何とかなるし。両親は70代だけど健康診断でも何の問題もないって言われているからね。強いて言えば子どもがいなくて老後寂しいかも知れないから、その分がマイナス20点かな」ということだそうです。実に楽観的です。

 いくら今は健康で元気とはいえ、70代のご両親はいつ倒れて要介護状態になるかもわかりません。その時に浮気ばっかりしていることに愛想を尽かされて奥さんに離婚されたらどうするつもりなの、と聞いたところ「介護?そんなこと考えたこともなかったなぁ。一緒に住んでるんだから、死んだら骨くらい拾ってやるよ、とは思っていたけど。だって二人ともピンシャンしているんだよ」と本当になんにも考えていないらしいのです。

 確かに介護の問題というのは、その時になってみないと実感が沸かないし、その時の状態で誰がどう介護できるのか変わってきますから、僕たちもいつも対策を練って考えているわけではありません。それにしたって70代の両親と同居していながら、介護の「か」の字も思ったことがないというのはあんまりです。

 Mっちゃんは「えー、みんなそんなこといつも考えてるの?信じられないよぉ、先のことなんてわからないんだから、その時はその時だよ」と言っています。その通りなんだけど、でも、そこまで先のことを考えないで「今だけ」を生きていけるほど僕たちは楽観主義者でもないし、勇気もありません。

 過去にとらわれず、未来を憂えることもない、今だけを見つめ、今を満足して生きているMっちゃんは、もしかしたらすでに悟りを開いた「聖者」なのかも、と一瞬思ってしまいそうです。本当は単なる「性者」なんですけどね。でも学ぶべきことも多いような気がしてしまうところがMっちゃんマジックなんだなぁ。


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